
株で50万円損した。
FXで100万円負けた。
暗号資産が暴落して大きな損失が出た。
こんなとき、「国から損失を補填してもらえる給付金はないの?」と考える人もいるかもしれません。
結論からいうと、株価や為替、暗号資産の価格下落によって発生した通常の投資損失を、国や自治体が現金で補填してくれる給付金・補助金は基本的にありません。
投資は原則として自己責任だからです。
ただし、そこで終わりではありません。
株やFXには、損失を利益と相殺したり、翌年以降に繰り越したりすることで税金を減らせる制度があります。
さらに、投資詐欺による損失であれば、「被害回復給付金支給制度」や「被害回復分配金」によって実際にお金が戻ってくる可能性もあります。
2026年現在の制度を詳しく見ていきましょう。
投資で損した人向けの「給付金」はある?
まず、通常の投資で損をした場合、
「株で100万円損したので国から100万円支給」
「暗号資産が暴落したので損失の半分を補助」
といった給付制度はありません。
一方で、税制上は損失を活用できる場合があります。
おおまかに整理すると次のようになります。
| 投資 | 損失を補填する給付金 | 損益通算 | 損失の繰越 |
|---|---|---|---|
| 上場株式 | 原則なし | 条件付きで可能 | 3年間 |
| NISA | なし | 不可 | 不可 |
| FX | 原則なし | 対象取引同士で可能 | 3年間 |
| 暗号資産 | 原則なし | 現行制度では限定的 | 現行制度では原則不可 |
| 投資詐欺 | 条件次第で被害回復制度あり | ― | ― |
特に覚えておきたいのが、株とFXです。
「損したお金そのものが戻ってくる」わけではありませんが、確定申告をすることで将来支払う税金を減らせる可能性があります。
株で損した場合は3年間繰り越せる
上場株式などを売却して損失が発生した場合、その損失は一定の条件で上場株式等の配当や売却益と損益通算できます。
さらに相殺しきれなかった損失は、確定申告をすることで翌年以後3年間繰り越すことができます。
例えば、
2026年:株で100万円の損失
2027年:株で100万円の利益
となった場合、要件を満たして損失を繰り越していれば、2027年の利益100万円と前年の損失100万円を相殺できる可能性があります。
通常、上場株式等の利益には所得税・復興特別所得税・住民税を合わせて20.315%が課税されます。
単純化すると100万円の利益に対する税負担は約20万3,150円です。
つまり損失をきちんと繰り越しておけば、翌年の利益に対する約20万円分の税負担を抑えられるケースもあります。
現金の給付金ではありませんが、「損した人向けの税負担軽減制度」と考えると分かりやすいでしょう。
配当金とも相殺できる場合がある
上場株式の譲渡損失は、売却益だけでなく、一定の上場株式等の配当所得などと損益通算できる場合があります。
源泉徴収ありの特定口座に配当金を受け入れている場合、同じ口座内の株式売却損と配当を証券会社側で損益通算できるケースもあります。
たとえば、
株の売却損:30万円
配当金:20万円
なら、条件を満たせば配当金と損失を相殺することができます。
複数の証券会社を使っている場合や損失を翌年以降へ繰り越したい場合などは、確定申告が必要になることがあります。
NISAで損した場合は要注意
「NISAなら税金がお得だから、損した場合も税制優遇があるのでは?」
と思うかもしれませんが、実は逆です。
NISA口座で発生した損失は、税務上「なかったもの」とみなされます。
そのため、特定口座や一般口座で得た利益との損益通算も、3年間の繰越控除もできません。
例えば、
NISA:100万円損失
特定口座:100万円利益
だったとしても、この100万円同士を相殺することはできません。
NISAは利益が非課税になる代わりに、損失を税金計算に利用できない制度だと覚えておきましょう。
FXで損した場合も3年間繰り越せる
FXにも損失を活用できる制度があります。
一定のFX取引による利益は「先物取引に係る雑所得等」として申告分離課税の対象になります。
そしてFXで損失が出た場合、他の対象となる「先物取引に係る雑所得等」と損益通算できます。
さらに、それでも損失が残った場合は、一定の要件を満たして確定申告を続けることで翌年以後3年間にわたって繰越控除できます。
例えば、
2026年:FXで150万円損失
2027年:FXで50万円利益
2028年:FXで100万円利益
という場合、適切に確定申告していれば、前年から繰り越した損失を2027年、2028年の利益から控除できる可能性があります。
ただし、FXの損失を会社員の給与所得から引いて所得税を安くすることはできません。
対象となる「先物取引に係る雑所得等」の範囲内での制度です。
暗号資産で損した場合はどうなる?
ビットコインやイーサリアムなどの暗号資産は、株やFXと扱いが異なるため注意が必要です。
2026年の現行制度では、暗号資産取引による所得は原則として雑所得に区分されます。
雑所得で損失が発生しても、その損失を給与所得などの他の所得から差し引くことはできません。
国税庁も、雑所得の損失は給与所得など他の所得とは損益通算できないとしています。
同じ年の他の雑所得と相殺できるケースはありますが、株やFXのように通常の暗号資産取引の損失を3年間繰り越す仕組みは、2026年分については利用できません。
暗号資産は今後「3年間繰越」が可能になる?
ここは2026年の大きな変更点です。
令和8年度税制改正では、一定の「特定暗号資産」について、将来的に20%の申告分離課税を導入するとともに、控除しきれない損失を翌年以後3年間繰り越せる制度が設けられました。
暗号資産に関する金融商品取引法等の改正法も2026年7月15日に成立し、7月23日に公布されています。
ただし、この税制の適用開始日は金融商品取引法改正の施行時期と連動しています。
税制改正では、改正金商法が施行された年の翌年1月1日以後に行う一定の暗号資産取引から新制度を適用する仕組みになっています。
したがって、2026年中の暗号資産損失について、「今年から株やFXと同じように3年間繰り越せる」と考えるのは誤りです。
今後の施行日には注意しましょう。
「投資詐欺」で損した場合は本当に給付金がある
ここまで紹介してきたのは、自分で株・FX・暗号資産に投資して値下がりしたケースです。
一方、
「必ず儲かると言われて振り込んだ」
「SNSで紹介された投資先が詐欺だった」
「暗号資産投資を勧められて指定口座に送金した」
といった投資詐欺の場合は話が変わります。
実際に「被害回復給付金支給制度」という国の制度があります。
法務省によると、詐欺などの財産犯罪で犯人から没収・追徴した犯罪被害財産を金銭化し、その事件の被害者などへ給付する制度です。
給付額の上限は実際の被害額ですが、回収された資金が被害総額より少ない場合には、被害額などに応じて按分されます。
つまり、投資詐欺で100万円を失ったから必ず100万円戻るという制度ではありません。
SNS型投資詐欺なら「被害回復分配金」の対象になることも
もう一つ知っておきたいのが「振り込め詐欺救済法」による被害回復分配金です。
金融庁によると、SNS型投資詐欺や未公開株詐欺などで銀行口座への振込みが使われた場合も対象になる可能性があります。
詐欺に利用された銀行口座を凍結し、その口座に残っているお金を原資として被害者に分配します。
ただし、犯人がすでにお金を引き出して口座残高がなくなっている場合などは、支払いを受けられない可能性があります。
投資詐欺に気付いた場合は、できるだけ早く警察と振込先の金融機関へ連絡することが重要です。
証券会社が破綻した場合は最大1,000万円補償されることも
もう一つ、通常の投資損失とは別に補償制度があります。
証券会社には顧客資産を自社の資産と分けて管理する「分別管理」が求められています。
それでも証券会社が破綻し、顧客の資産を返還できなくなった場合には、日本投資者保護基金から1人当たり最大1,000万円まで補償される場合があります。
ただし、これは証券会社の破綻によって「預けた資産が返ってこない」場合の制度です。
株価が100万円から50万円に値下がりした50万円の損失を補償してくれるわけではありません。
日本投資者保護基金も、株式の評価損は補償対象外と明記しています。
また、通常のFX取引は同基金の補償対象ではありません。
100万円損したら結局どうすればいい?
株・FX・暗号資産で大きな損失を出した場合は、単に「損した」で終わらせず、取引の種類を確認しましょう。
上場株式なら、他の証券口座で利益や配当が出ていないか確認します。
FXなら、対象となるFX・先物取引等で利益がないか確認します。
そして、翌年以降に利益が出る可能性があるなら、損失の繰越控除を受けるため確定申告が必要か確認してください。
暗号資産については2026年現在、株やFXと同じ3年間の損失繰越制度がまだ適用されていない点に注意が必要です。
一方、値下がりではなく詐欺による損失なら、税金の話だけで終わらせず、警察、金融機関、金融庁などへの相談を優先しましょう。
「損失補填します」という給付金詐欺にも注意
投資で大きな損失を出した人を狙って、
「国の制度で投資損失を取り戻せます」
「金融庁から補助金が出ます」
「手数料を払えば被害金を全額回収できます」
などと勧誘する二次被害にも注意が必要です。
金融庁は、「被害を回復してあげる」と持ちかけて別の商品を購入させるような詐欺的投資勧誘について注意喚起しています。
普通の投資損失を国が全額補償する制度はありません。
「投資で負けた人限定の給付金があります」などと言われた場合は、まず疑った方がよいでしょう。
まとめ
株、FX、暗号資産で損失を出しても、値下がりによる損失を国が現金で補填してくれる一般的な給付金・補助金はありません。
ただし、損をした後に使える制度はあります。
上場株式は、一定の損失を利益や配当と損益通算でき、残った損失を3年間繰り越せます。
FXも、対象となる取引同士で損益通算し、残った損失を3年間繰り越せる場合があります。
NISAの損失は損益通算・繰越控除の対象外です。
暗号資産は2026年分については原則として雑所得扱いで、給与所得との損益通算や通常の3年間の繰越控除はできません。ただし税制改正により、一定の暗号資産について将来的に3年間の繰越控除が導入されることになっています。
そして、投資詐欺による損失の場合には、「被害回復給付金」や「被害回復分配金」によって一部または全部のお金が戻る可能性があります。
「損した=何もできない」とは限りません。
投資の種類と損失の原因によって、利用できる制度を確認することが重要です。
よくある質問
Q. 株で100万円損したら100万円の給付金がもらえますか?
通常の株価下落による損失に対する給付金はありません。ただし課税口座の上場株式なら、損益通算や3年間の繰越控除を利用できる場合があります。
Q. 株の損失を給料から差し引けますか?
通常の上場株式の譲渡損失を給与所得から直接差し引くことはできません。上場株式等の譲渡益や一定の配当等との損益通算が中心となります。
Q. NISAで大損した場合も確定申告した方がいいですか?
NISA口座の損失は税務上ないものとみなされるため、特定口座などの利益との損益通算や3年間の繰越控除には利用できません。
Q. FXで負けた年も確定申告する意味がありますか?
翌年以後にFX等で利益が出る可能性がある場合、損失を3年間繰り越すために確定申告が重要になるケースがあります。
Q. 暗号資産の損失も3年間繰り越せますか?
2026年分については、通常の暗号資産取引の損失を株やFXのように3年間繰り越す制度は適用されません。税制改正により一定の特定暗号資産に3年間の繰越控除を導入することは決まっていますが、適用開始日は改正金融商品取引法の施行時期と連動します。
Q. SNSの投資詐欺で100万円取られました。給付金はありますか?
ケースによっては「被害回復給付金支給制度」や振り込め詐欺救済法による「被害回復分配金」の対象になる可能性があります。特に銀行振込を利用したSNS型投資詐欺について、金融庁は救済制度の対象となり得ることを案内しています。被害に気付いた場合は早めに警察と金融機関へ連絡してください。
※本記事は2026年9月11日時点の国税庁、金融庁、財務省、法務省等の公表情報をもとに作成しています。個別の税務処理は取引内容によって異なるため、実際の申告にあたっては国税庁・税務署や税理士等へご確認ください。
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