
京都府舞鶴市で、民家の軒下に居座ったツキノワグマ2頭を殺処分したことを巡り、市役所に多数の電話やメールが寄せられ、その一部が職員への暴言・誹謗中傷に発展しています。
鴨田秋津市長は9月8日、SNSで「職員は死んだほうが良い」「職員の親族もろくでもない」などの電話があったと明らかにし、これまでの電話はすべて録音しているとして、悪質なものには毅然と対応する姿勢を示しました。
「駆除に反対する意見」と「職員への暴言」は別問題です。行政判断への批判や動物愛護の観点から意見を述べること自体は当然可能です。一方、職員個人への脅迫的・侮辱的言動は、舞鶴市のカスタマーハラスメント方針の対象となり得ます。
何が起きた?民家の軒下にツキノワグマ2頭
舞鶴市によると、2026年9月3日午後5時ごろ、大波下地区の民家の離れの縁下にツキノワグマ2頭が居座る事案が発生しました。
現場は住宅地で、近隣には学校や病院もあります。周辺では5月下旬以降、クマの目撃が続き、8月下旬からは住宅地内にも出没。前日には近隣住宅の柿を食べる姿も確認されていました。
市は、追い払っても戻る可能性が極めて高く、市民への危害が強く懸念されると判断。警察・京都府などと協議のうえ、京都府内で初めてとなる麻酔銃を使用した「緊急銃猟」を実施しました。
| 時刻 | 主な対応 |
|---|---|
| 17:12 | 近隣住民から警察へ通報 |
| 17:40 | 舞鶴市職員が現場確認 |
| 18:05 | 市長が麻酔銃による緊急銃猟を判断 |
| ~20:40 | 近隣7軒へ屋内退避指示、道路・交差点7カ所を規制 |
| 21:40 | 緊急銃猟開始 |
| 23:01 | 成獣1頭25kg、幼獣1頭5kgの殺処分完了 |
市は約30人態勢、住民に屋内退避を指示
現場では、専門業者、警察、市職員など約30人が対応。近隣住民への屋内退避指示や交通規制を実施し、安全を確保したうえで作業しました。
けが人は確認されていません。
舞鶴市は緊急銃猟について、「人命または身体への危害を防止するためにやむを得ず実施する緊急の対応」と説明しています。
駆除後、市役所に「なぜ殺す」「開示請求するぞ」
問題は緊急対応の最中から始まっていました。
鴨田市長は、緊迫した対応の最中にも「なぜ殺すのか」「開示請求するぞ」といった電話やメールが複数入り、市役所本部・現場・報道機関との連絡に支障が出たと説明しています。
その後も問い合わせは続き、市公式発表では、職員への暴言や誹謗中傷に類する内容が含まれていると明記されました。
「職員は死んだほうが良い」市長は“全て録音”
9月8日、市長はSNSで、土日を挟んでも悪質な電話が続き、職員本人だけでなく親族を侮辱する内容まであったと説明。
市長は「これまでの電話は全て録音してあります」とし、誹謗中傷と判断される内容には市の基本方針に基づき毅然と対応するとしています。
舞鶴市は2025年から外線電話を録音
舞鶴市は今回のクマ事案を受けて突然録音を始めたわけではありません。
市は2025年2月からカスタマーハラスメント対策を本格化し、4月以降、外線電話の録音、防犯カメラ、業務時間外の自動音声応答などを順次導入しています。
職員アンケートでは、回答者286人のうち80%超が過去にカスタマーハラスメントを受けた経験があり、そのうち90%超が心身に何らかの影響を受けたと回答しています。
市の基本方針では、脅迫・中傷・名誉毀損・侮辱・暴言、執拗な言動、職員個人への攻撃などをカスハラの例として列挙。状況によっては対応を中断し、弁護士への相談や警察への通報も行うとしています。
ここから補助金|クマ被害は「駆除するか」だけの問題ではない
クマ対策では、市街地に入り込んだ後の緊急駆除だけでなく、そもそも人里へ近づけない環境づくりが重要です。
舞鶴市では、有害鳥獣対策として、捕獲と防除を組み合わせた公的支援を実施しています。
舞鶴市の侵入防止柵支援
農地へのシカ・イノシシなどの侵入を防ぐため、電気柵など侵入防止柵の資材を貸与する事業を予算の範囲内で実施しています。
受益戸数3戸以上、費用対効果などの採択要件があり、個人が申請すれば必ず現金を受け取れる制度ではありません。
捕獲檻の設置支援
農事組合が捕獲檻を所有したい場合、一定の要件を満たせば市が檻を購入して地元へ貸与する仕組みがあります。購入費の2分の1は地元負担です。
「クマが出たら個人に給付金」という制度ではありません。舞鶴市の支援は、主として地域・農事組合による鳥獣被害防止対策への資材貸与等です。
国は2026年度「鳥獣被害防止総合対策交付金」99億円
国レベルでは、農林水産省が2026年度の「鳥獣被害防止総合対策交付金」として99億円(9,900百万円)を計上しています。
対象は地域協議会、地方公共団体、民間団体などで、補助率は定額・2分の1等。クマを含む野生鳥獣による農作物被害や農山漁村の生活被害に対し、
- 地域ぐるみの被害防止
- 侵入防止柵
- 広域捕獲
- 人材育成
- ジビエ利用
などを支援します。
つまり、クマ対策に公費を使う目的は「殺処分を増やすこと」ではありません。捕獲、防除、餌となるものの除去、人里への侵入抑制などを組み合わせ、危険な接触そのものを減らすことが中心です。
舞鶴市が市民に求めているクマ対策
舞鶴市は今回の事案を受け、住宅地にクマを近づけないため、
- 収穫予定のない柿などの果実を処分する
- 不要な果樹を伐採する
- 生ごみを屋外に放置しない
- クマを目撃しても近づかず警察・市へ通報する
よう呼びかけています。
この記事のポイント
- 9月3日、舞鶴市の民家軒下にツキノワグマ2頭が居座った
- 現場は住宅地で学校・病院も近く、市は危険性が高いと判断
- 京都府内初の麻酔銃による緊急銃猟を実施し、2頭を殺処分
- 専門業者・警察・市職員など約30人が対応
- 駆除後、市職員への暴言・誹謗中傷が相次いだ
- 市長は「職員は死んだほうが良い」などの電話があったと公表
- 市長は電話をすべて録音していると説明
- 舞鶴市は2025年から外線電話録音などカスハラ対策を導入済み
- 舞鶴市には電気柵等の侵入防止支援がある
- 国の2026年度鳥獣被害防止総合対策交付金は99億円
よくある質問
Q:クマ2頭はなぜ殺処分されたのですか?
舞鶴市は、住宅密集地で学校・病院も近く、周辺で継続的な出没や柿を食べる行動があり、追い払っても戻る可能性が極めて高いとして、市民への危害防止を理由に緊急銃猟を決定しました。
Q:市職員への電話は本当に録音されていますか?
鴨田市長は、今回の問い合わせ電話について「これまでの電話は全て録音してあります」と公表しています。舞鶴市は以前からカスハラ対策として外線電話録音を導入しています。
Q:クマ対策で個人がもらえる給付金はありますか?
舞鶴市の有害鳥獣対策は、農事組合や複数の受益者による侵入防止柵・捕獲檻などへの支援が中心です。全国一律で個人に現金が支給される「クマ給付金」ではありません。
参照情報
- 舞鶴市:ツキノワグマの民家居座りによる緊急銃猟の経過と対応
- 舞鶴市:カスタマーハラスメント対策
- 舞鶴市:有害鳥獣の対策
- J-CASTニュース:クマ殺処分後の暴言電話と市長の対応
- 農林水産省:鳥獣被害防止総合対策交付金(令和8年度)




