
NHKは2026年9月9日、20代の記者について、相手方の同意なく性的な身体接触を行ったとして、懲戒免職の処分を行ったと発表しました。
NHKは処分理由について、
「相手方の同意なく、性的な身体接触を行った」
と説明しています。
そのうえで、こうした行為はNHK職員としてふさわしくないと判断したとしています。
一方、NHKは相手方の性別や20代記者の性別、具体的にどのような身体接触が行われたのかなど、詳細を明らかにしていません。
したがって現時点では、
「男性記者が女性に行った」
「職場内で起きた」
「刑事事件に該当する行為だった」
などと推測して報じることはできません。
今回確認できている事実は、あくまでNHKが「相手方の同意なく性的な身体接触を行った」として20代記者を懲戒免職にした、というところまでです。
NHK会長「痛恨の極み」
NHKの井上樹彦会長は今回の処分を受け、
2026年1月に「NHKハラスメント防止・撲滅宣言」を行い、4月には「NHK人権方針」を策定して人権問題への取り組みを強化している中で、このような事案が発生したことについて「痛恨の極み」とするコメントを公表しました。
さらに、NHKへの信頼を損ねたとして視聴者へ謝罪し、人権侵害やハラスメントなどの不適切な行為を許さず、厳正に対処するとしています。
今回の処分は「停職」や「減給」ではありません。
職員としての身分を失わせる懲戒免職という重い処分が選択されました。
それだけNHKが「本人の同意のない性的な身体接触」を重大な問題と判断したことになります。
「同意がない性的行為」を政府はどう考えている?
内閣府は、性犯罪・性暴力について非常に明確な考え方を示しています。
身体と心は本人自身のものであり、いつ、どこで、誰と、どのような性的関係を持つかは本人が決めるものとしています。
そして、
同意のない性的な行為は性暴力であり、重大な人権侵害
としています。
これは年齢や性別に関係ありません。
また、恋人、配偶者、同僚、上司など身近な関係であっても、「相手との関係がある=性的な接触への同意がある」ということにはなりません。
一つの行為に同意したからといって、別の行為についても同意したことにもなりません。
職場での性的な身体接触は「セクハラ」になり得る
ここからは今回のNHK事案そのものではなく、一般的な職場でのケースについて説明します。
今回の行為が職場内だったのか、職務に関連したものだったのかは公表されていません。
厚生労働省によると、職場におけるセクシュアルハラスメントには大きく、
対価型セクシュアルハラスメント
と
環境型セクシュアルハラスメント
があります。
例えば、性的な言動を拒否したことで降格や減給などの不利益を受けるものが「対価型」。
性的な言動によって職場環境が不快となり、仕事をするうえで重大な支障が生じるものが「環境型」です。
そして重要なのは、セクハラの被害者・行為者に性別の限定はないという点です。
男性から女性だけでなく、女性から男性、同性間でも該当する場合があります。
そのため今回のNHK事案でも、公表されていない性別を勝手に推測する必要はありません。
では、性被害で仕事を休んだら「給付金」はある?
ここが生活に関わる重要なポイントです。
性的な被害やセクシュアルハラスメントによって精神的な不調を発症し、仕事を続けられなくなった場合、条件によっては公的な現金給付を受けられる可能性があります。
代表的なのが、
労災保険
と
健康保険の傷病手当金
です。
ただし、この2つは同じ制度ではありません。
仕事が原因なら「労災保険」の対象になる可能性
厚生労働省は、
セクシュアルハラスメントが原因で精神障害を発病した場合、労災保険の対象になることがある
と明確に案内しています。
もちろん、
「セクハラがあった=必ず労災認定」
ではありません。
精神障害を発病していることや、仕事による強い心理的負荷が認められることなど、労災認定基準に基づいて個別に判断されます。
労災認定されて仕事を休むと「約80%相当」が支給される場合も
業務災害による傷病の療養のために働くことができず、賃金を受け取れない場合には、労災保険の休業補償等給付の対象になる可能性があります。
厚生労働省によると、休業4日目から、
給付基礎日額の60%
の休業補償等給付に加え、
20%
の休業特別支給金が支給されます。
合計すると、
給付基礎日額の80%相当
です。
例えば給付基礎日額が1万円なら、単純計算では、
1日8,000円相当
となります。
30日すべてが対象になると仮定した単純例では24万円相当ですが、実際の支給日数や給付基礎日額、待期などによって金額は変わります。
したがって、
「性被害を受ければ給与の80%が必ずもらえる」
という制度ではありません。
あくまで業務との因果関係などを含めて労災認定された場合の制度です。
治療費も労災給付の対象になる場合がある
労災認定された場合には、休業時のお金だけでなく、必要な療養について療養補償等給付を受けられる場合があります。
厚生労働省は、業務災害などによる傷病について、労災指定医療機関等で必要な療養を受けられる仕組みを設けています。
職場のセクハラなどをきっかけとして精神障害を発症した場合も、認定されればこうした労災保険制度につながる可能性があります。
仕事とは無関係なら「傷病手当金」を確認
一方、病気やケガの原因が業務外である場合には、会社員など健康保険の被保険者なら傷病手当金を利用できる可能性があります。
主な条件は、
- 業務外の病気・ケガで療養している
- 仕事をすることができない
- 連続3日間を含め4日以上休んでいる
- 休業期間について十分な給与を受け取っていない
ことなどです。
支給額は原則、
支給開始前12か月間の平均標準報酬月額÷30×3分の2
で計算されます。
支給期間は、支給開始日から通算1年6か月です。
ざっくり言えば、給与の約3分の2を基準に生活を支える制度です。
「労災」と「傷病手当金」は原因によって違う
整理すると、次のようになります。
| 状況 | 確認したい制度 |
|---|---|
| 職場でのセクハラなど業務が原因で精神障害を発症 | 労災保険 |
| 業務外の原因で療養し、仕事ができない | 健康保険の傷病手当金 |
| 性犯罪・性暴力そのものについて相談したい | 性犯罪・性暴力被害者ワンストップ支援センター |
| 職場のセクハラについて会社外へ相談したい | 都道府県労働局の雇用環境・均等部(室) |
どちらの現金給付になるのかを本人だけで判断する必要はありません。
業務との関連が考えられる場合は、労働基準監督署や都道府県労働局などへ相談できます。
セクハラによる労災には専用の相談窓口も
厚生労働省は、都道府県労働局に、
「職場でのセクシュアルハラスメント等による精神障害の労災請求」
について相談できる窓口を設置しています。
また、都道府県労働局の「雇用環境・均等部(室)」では、セクシュアルハラスメントやパワーハラスメントなどについて相談を受け付けています。
原則、平日の8時30分~17時15分です。
正社員だけの制度ではありません。
厚生労働省は、男女雇用機会均等法について、正社員、パート、アルバイト、派遣など雇用形態を問わず適用されると説明しています。
会社に相談したことを理由に不利益を受けてはいけない
「会社に言ったら働きづらくなるのでは?」
という不安を持つ人もいるでしょう。
しかし厚生労働省は、セクシュアルハラスメントについて相談したことなどを理由に、会社が労働者へ不利益な取り扱いをすることは禁止されていると説明しています。
会社の相談窓口が機能しない場合には、外部の都道府県労働局へ相談することもできます。
さらに労働局では、会社と労働者とのトラブルについて、無料の紛争解決援助制度を利用できる場合があります。
性犯罪・性暴力なら「#8891」
職場かどうかにかかわらず、同意のない性的な行為について相談できる公的な窓口もあります。
全国の「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター」では、
#8891(はやくワンストップ)
に電話すると最寄りのセンターにつながります。
医療、カウンセリング、法律相談などの専門機関とも連携しています。
相談者の性別は限定されていません。
今回のNHK事案について「労災給付が出る」とは言えない
ここは特に注意が必要です。
今回のNHKの発表では、
- 相手方の性別
- 被処分者の性別
- 具体的な身体接触の内容
- 発生場所
- 業務中だったか
- 被害を受けた人がNHK職員なのか
- 精神的・身体的な傷病が生じたのか
などは明らかにされていません。
したがって、今回の相手方が労災給付や傷病手当金の対象になると断定することはできません。
今回のニュースから確認できるのは、
「同意のない性的身体接触を理由としてNHKが20代記者を懲戒免職にした」
という事実です。
一方、同様の行為が職場で発生し、それによって働けないほどの精神障害などを発症したケースでは、労災保険による公的給付を受けられる可能性があります。
ここを分けて理解することが大切です。
この記事のポイント
- NHKは2026年9月9日、20代記者を懲戒免職
- 理由は「相手方の同意なく性的な身体接触を行った」ため
- 相手方・記者の性別や具体的行為は明らかにされていない
- 井上会長は「痛恨の極み」とコメント
- 同意のない性的な行為について内閣府は「性暴力であり重大な人権侵害」としている
- 今回のNHK事案が職場内で起きたかどうかは公表されていない
- 一般論として、職場のセクハラで精神障害を発症すると労災認定される場合がある
- 労災の休業補償等では給付基礎日額の60%+特別支給金20%となる場合がある
- 業務外の病気・ケガなら傷病手当金は原則約3分の2
- 性犯罪・性暴力の相談は「#8891」
- 職場のセクハラ相談は都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)でも受け付け




