
「しね」「ばか」「だいきらい」――。横浜市内の認可保育所で、5歳児クラスの園児が別の園児からこう書かれた手紙を受け取った事案について、第三者的な立場で検証を行った横浜市児童福祉審議会の部会が、「いじめに相当すると考えられる行為」と整理しました。
横浜市は2026年9月8日、「市内認可保育所におけるいじめ事案に係る検証報告書」を公表。手紙の事案だけでなく、容姿を揶揄する発言や「ママ消えればいいのに」などの発言を含む複数の行為について検証しています。
重要な制度上の違い:保育園児は「いじめ防止対策推進法」の対象となる「学校に在籍する児童・生徒」には含まれません。そのため部会は、法律上の「いじめ」と直接認定したのではなく、同法の定義のうち年齢・就学要件以外を満たす行為を「いじめに相当すると考えられる行為」と表現しています。
「しね ばか だいきらい」の手紙は実際にあった
報告書によると、2025年3月13日、当時5歳児クラスだった児童Aは、別の園児から折り紙に「しね ばか だいきらい」と書かれた手紙を受け取りました。
園側はこの事実を把握し、手紙を書いた園児から事情を聞き、児童Aへ謝るよう指導しました。しかし、児童Aの保護者へすぐには報告しませんでした。
保護者が児童A本人から手紙のことを聞いたのは3月24日。翌25日に園へ問い合わせ、同日の夕方になって初めて担任から説明を受けたとされています。
手紙だけではない 第三者部会が「いじめ相当」とした複数行為
検証報告書は、確認された事案のうち、手紙の件のほか、容姿を揶揄する発言、「ママ消えればいいのに」などの発言を含む複数の行為について、いじめ防止対策推進法上の「児童等」という要件以外は、同法のいじめ定義を満たすと判断しました。
そのため報告書では、これらを一貫して「いじめに相当すると考えられる行為」としています。
一方、すべての訴えが事実確認されたわけではありません。たとえば「児童Aの上に6人くらいの園児が乗り、息ができなくなった」とされた事案については、部会はそのような事実があったとは確認できなかったとしています。報道・記事化では、確認済み事実と保護者側の申告内容を分ける必要があります。
園の対応は「ネグレクト」だったのか?部会は否定
国のガイドラインでは、保育所等で他の子どもによる身体的・心理的虐待に当たる行為を職員が放置することは、保育所等における虐待のうち「ネグレクト」に位置付けられます。
今回、園は手紙を書いた園児への聞き取りや謝罪指導、容姿に関する発言への注意など、その都度一定程度の介入をしていました。
このため第三者部会は、いじめ相当行為を「放置した」とまでは言えず、園の対応はネグレクトには該当しないと判断しています。
それでも厳しく指摘された「保護者への報告遅れ」
ネグレクトではないから、園の対応に問題がなかったという意味ではありません。
報告書は、「しね ばか だいきらい」の手紙について、児童への影響を考えれば重大な出来事だったにもかかわらず、発生から2週間弱が経ち、保護者から聞かれて初めて説明した点を問題視。
園には事案の重大性についての認識が欠けていたとし、発生後速やかに保護者へ伝え、園と家庭で児童の様子を確認しながら心のケアを行うべきだったと指摘しました。
第三者部会が求めた再発防止策
- 幼児の発達や子ども同士の関わり方について保育者研修を充実させる
- いじめに相当する行為や不適切な関わりの具体例を市内保育施設で共有する
- 子どもへの影響が懸念される事案は保護者へ迅速に伝える
- 異変を察知した際の園内報告・法人への連絡・保護者への説明手順をマニュアル化する
- 市職員が保護者に寄り添って対応できる体制を整える
- 児童・保護者への必要な支援につなげる
保育園の対応に不安があるとき、横浜市には専用相談窓口がある
横浜市は、市内の保育所、幼稚園、認定こども園などでの不適切保育について、職員や保護者から相談を受け付ける専用相談窓口を設けています。
園に直接伝えても解決しない、園へ名前を出して相談しにくい、子どもの安全面で不安があるといった場合は、市や区役所へ相談できます。
ここから公的支援|心の不調で通院が必要なら「小児医療費助成」
いじめ相当の出来事や強いストレスをきっかけに、子どもが不眠、強い不安、登園・登校困難などを訴え、医療機関への受診が必要になる場合があります。
横浜市では2026年6月から、小児医療費助成の対象を18歳年度末までへ拡大しました。
| 項目 | 横浜市の小児医療費助成 |
|---|---|
| 対象年齢 | 0歳~18歳年度末まで |
| 対象 | 横浜市内在住で健康保険に加入している子ども等 |
| 入院・通院 | ともに対象 |
| 保険診療の自己負担 | 全額助成 |
精神科・心療内科・小児科などであっても、制度上の対象となる保険診療であれば助成対象となり得ます。
「いじめに遭えば給付金が出る」制度ではありません。小児医療費助成は、原因を問わず、対象となる子どもの保険診療自己負担を助成する制度です。差額ベッド代、文書料、健康診断など保険給付外の費用は対象外です。
この記事のポイント
- 「しね ばか だいきらい」の手紙が渡された事実は第三者部会が確認
- 未就学児は、いじめ防止対策推進法の直接の対象ではない
- 部会は複数行為を「いじめに相当すると考えられる行為」と整理
- 園は一定の介入をしていたため、ネグレクトには該当しないと判断
- 一方、手紙を保護者へ約2週間知らせなかった対応は強く問題視
- 横浜市の小児医療費助成は2026年6月から18歳年度末まで拡大
- 保険診療の自己負担額は原則全額助成
よくある質問
Q:横浜市はこの件を法律上の「いじめ」と認定したのですか?
厳密には異なります。未就学児は、いじめ防止対策推進法の対象となる「児童等」ではないため、部会は「いじめに相当すると考えられる行為」と表現しています。
Q:園は子ども同士のトラブルを放置したのですか?
部会は、園が聞き取りや注意、謝罪指導など一定の介入を行っていたことから、ネグレクトに該当するほど放置したとは判断していません。一方、保護者への報告遅れは重大な問題と指摘しています。
Q:子どもが心の不調で通院した場合、医療費助成は使えますか?
横浜市では0歳から18歳年度末までの子どもについて、対象となる保険診療の自己負担額を全額助成しています。具体的な受診・制度適用は医療機関や横浜市へ確認してください。




