国連総会が「世界の大陸や国の大きさをより正確に示す地図」を促す決議を採択し、Equal Earth(イコールアース)図法への注目が急速に高まっています。

その一方、日本では、Equal Earthの公式政治地図で北方領土がロシア本土と同じ色で塗られているとの報道が波紋を広げています。

日本政府は、歯舞群島、色丹島、国後島、択捉島の北方四島を「我が国固有の領土」とする立場です。ロシアが実効支配する現状の中で、国際的に流通する地図の色分けによって「ロシア領として確定している」と誤認されるのではないか、という懸念です。

ここで最も重要なポイント:Equal Earthは「地球を平面にどう投影するか」という地図の図法です。北方領土を何色で塗るか、国境線をどこに引くかは、投影法そのものではなく、政治地図に使う境界データ・編集方針の問題です。

国連総会が「Correct the Map」決議を採択

2026年9月4日、国連総会はアフリカ主導の「Correct the Map」決議を採択しました。

国連によると採決は賛成164、反対1。米国が唯一反対しました。

目的は、従来広く使われてきたメルカトル図法では、高緯度地域が実際より大きく見え、アフリカなど低緯度地域が相対的に小さく見える問題を是正することです。

Equal Earthは、各地域の面積比を保つ「正積図法」の代表例として注目されています。

「国連がEqual Earth政治地図の国境を承認した」わけではない

ここは誤解しやすいところです。

国連決議が促しているのは、各地域の相対的な面積をより正確に表す地図投影法の利用です。

特定のウェブサイトに掲載されているEqual Earth政治地図の国境線や色分けを、国連がすべて承認したという意味ではありません。

Equal Earth公式サイト自身も、地政学的な問題は論争的であり、利用者が地図内容に同意しない場合は編集可能なファイルで変更できると説明しています。

整理すると:「Equal Earth図法を使うこと」と「北方領土をロシア色で塗ること」は別の判断です。図法の採用=ロシアの領有権を国連が承認、とは言えません。

Equal Earthの公式政治地図は何のデータを使っている?

Equal Earth公式サイトによると、政治地図の海岸線、河川、湖、国境、都市などの主要ベクターデータには、公開データセットNatural Earthが使われています。

つまり、国境・領域表現の多くはEqual Earthの数学的な投影式ではなく、基礎地理データと編集方針に由来します。

また公式サイトには、英語版でも「standard boundaries」「India boundaries」など複数の境界バージョンが用意されており、国境表現が唯一絶対のものではないことが分かります。

「ロシアと同色」だと何が問題?

地図を見る一般利用者は、国境線を細かく確認するより、色で「どこの国か」を判断することが多くあります。

そのため、係争中の地域や政府間で立場が異なる地域を一方の国と同色で塗ると、

  • その国の領土として国際的に確定している
  • 領土問題自体が存在しない
  • 国連がその領有を認めている

と誤解される可能性があります。

一方で:世界の政治地図では、実効支配、国際承認、各国政府の主張、地図データ提供者の方針が一致しないケースが多数あります。色分けだけで国際法上の帰属が決まるわけではありません。

日本政府の北方領土に関する立場

内閣府北方対策本部は、歯舞群島、色丹島、国後島、択捉島について、「我が国固有の領土」であり、現在もロシアの不法占拠下にある、というのが日本政府の立場だとしています。

日本政府は、「北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結する」という基本方針の下、交渉を継続する立場です。

領土問題には相反する国家間の主張があります。この記事で「日本固有の領土」と記載する部分は日本政府の公式見解です。ロシアは北方四島を自国領として実効支配しています。

日本の学校地図ではどう表記されている?

日本の地図教科書では、日本政府の立場を踏まえ、北方領土を日本の領土として表記する扱いが長年取られています。

帝国書院は、文部省の1969年通達を踏まえ、1971年度発行の教科書・地図帳以降、北方領土を日本領として明確に表記していると説明しています。

ここから公的支援|北方領土問題には「北方基金100億円」

北方領土問題は外交・教育だけでなく、国と北海道による公的資金支援とも直結しています。

内閣府によると、北方領土隣接地域の振興などを目的に「北方領土隣接地域振興等基金(北方基金)」が設けられています。

項目内容
基金総額100億円
国負担80億円
北海道負担20億円
対象地域根室市、別海町、中標津町、標津町、羅臼町
主な用途地域振興、住民生活安定、啓発、元島民援護など

基金は、教育施設、生活環境施設、公立病院の医療機器、水産資源対策、返還要求運動、元島民援護などに活用されています。

100億円を住民へ一律配る給付金ではありません。地域振興・生活安定・元島民援護などに使う基金です。

2026年度も北方領土隣接地域への補助金を実施

北海道は2026年度も、

  • 北方領土隣接地域振興等事業推進費事業補助金
  • 北方領土隣接地域振興等補助金
  • 北方領土隣接地域振興加速化補助金

などの補助事業を公表しています。

目的は、北方領土隣接地域の振興、住民生活の安定、北方領土問題の早期解決につながる返還要求運動などを支援することです。

元島民には生活・住宅・修学などの低利融資

元島民や北方地域周辺海域に旧漁業権を持っていた人などについては、北方領土問題対策協会による低利融資制度があります。

資金貸付限度額の例
生活資金40万円、内容により120万円(特に必要な場合250万円)
介護・福祉資金300万円
住宅資金4,000万円
漁業設備資金6,000万円

これは給付金ではなく、原則返済が必要な融資です。

「地図の誤表記」と公的支援はなぜつながる?

北方基金や啓発事業には、「北方領土問題について正確な理解を広げる」という目的があります。

国際的に利用される地図で、日本政府の認識と異なる表記が広がれば、国内の教育・啓発だけでなく、海外に向けた情報発信の重要性も高まります。

政府が返還要求運動、教材、現地視察、元島民の語り部活動などへ公費を投入しているのは、領土問題の認知を次世代へ継承する政策の一環です。

今回の論点は「Equal Earthを使うな」ではありません。面積を正しく示す図法のメリットと、政治地図の国境・色分けが生む誤認リスクは、別々に評価する必要があります。

この記事のポイント

  • 国連総会は9月4日、面積をより正確に示す地図利用を促す決議を164対1で採択
  • Equal Earthは面積比を保つ正積図法として注目
  • 日本では北方領土がロシアと同色に見える政治地図表現が物議
  • Equal Earthという図法自体は国境線・色分けを決めない
  • 公式政治地図の主要基礎データはNatural Earth
  • 国連決議=特定政治地図の北方領土表記を承認、ではない
  • 日本政府は北方四島を「我が国固有の領土」とする立場
  • 北方基金は100億円、国80億円・北海道20億円で造成
  • 2026年度も北方領土隣接地域への複数の補助事業を実施
  • 元島民等には生活・住宅・修学・事業資金の低利融資制度もある

よくある質問

Q:国連は北方領土をロシア領と認定したのですか?

今回のEqual Earth関連決議は、世界各地域の面積をより正確に表す地図投影法の利用を促すもので、特定の政治地図における北方領土の色分けを国連が承認したという内容ではありません。

Q:Equal Earthにすると北方領土は必ずロシア色になりますか?

いいえ。Equal Earthは投影法です。国境・色分けは使用する地理データや地図制作者の編集方針で変えられます。

Q:日本政府の公式見解は?

日本政府は歯舞群島、色丹島、国後島、択捉島を我が国固有の領土と位置付け、北方四島の帰属問題を解決して平和条約を締結する方針です。

Q:北方基金100億円は住民への給付金ですか?

いいえ。隣接地域の振興、住民生活の安定、啓発、元島民援護などの事業に活用する基金です。

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