
「社会保険料は毎月払っているけれど、実際に何がもらえるのか分からない」
そんな人は少なくないでしょう。
日本では、病気やケガ、出産、死亡、老後など、生活が大きく変化したときの負担を支えるため、健康保険や公的年金をはじめとする社会保障制度が用意されています。
その根底にあるのが、日本国憲法第25条です。
同条では、
「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」
と定められています。
さらに第2項では、国が社会福祉、社会保障、公衆衛生の向上・増進に努めることを規定しています。
ただし、ここで注意が必要です。
「すべての国民が、すべての社会保険給付を無条件でもらえる」という意味ではありません。
実際の給付は、加入している保険、年齢、所得、勤務状況、保険料納付期間など、それぞれの制度の要件を満たした人が対象です。
では、2026年現在、私たちの生活に身近な「もらえるお金」には何があるのでしょうか。
病気で働けないときは「傷病手当金」
会社員など健康保険の被保険者が、業務外の病気やケガによって仕事を休み、給与を受けられない場合には、条件を満たすと傷病手当金が支給されます。
支給額は原則として、
支給開始日前12か月の平均標準報酬月額÷30×3分の2
で計算されます。
支給期間は、同じ病気・ケガについて支給開始日から通算1年6か月です。
例えば平均標準報酬月額が30万円なら、単純化すると1日あたり約6,667円程度が基準になります。
1か月仕事を休んだ場合には、かなり大きな生活保障となり得ます。
ただし、傷病手当金は一般的な国民健康保険には原則として同じ形では用意されていません。加入する保険によって利用できる給付が異なる点には注意してください。
出産したら「1児50万円」の出産育児一時金
健康保険には、出産時の大きな費用負担を軽減する出産育児一時金があります。
産科医療補償制度に加入する医療機関などで、妊娠22週以降に出産した場合は、
子ども1人につき50万円
が支給されます。
双子なら原則2人分です。
一定の場合には48万8,000円となります。
医療機関が健康保険から直接一時金を受け取る「直接支払制度」を利用すれば、出産時にいったん50万円全額を自分で用意する必要もありません。
医療費が高額になったら「高額療養費」
入院や手術などで医療費が高額になった場合に重要なのが、高額療養費制度です。
1か月の医療費の自己負担額が、年齢や所得に応じて設定された上限を超えた場合、その超過分が支給されます。
2026年8月から制度が見直され、例えば70歳未満で年収約370万円~510万円の人が、1か月に医療費100万円の治療を受けた場合、自己負担は約9万3,000円までに抑えられるケースがあります。
さらに2026年8月からは、長期療養者への配慮として年間上限も導入されています。
「医療費が100万円なら3割負担で30万円」と単純に考える必要はないわけです。
亡くなったときは健康保険から5万円
健康保険には死亡時の給付もあります。
被保険者が亡くなった場合、その人によって生計を維持されていた人には、
埋葬料5万円
が申請によって支給されます。
該当者がおらず、別の人が実際に埋葬を行った場合は、5万円を上限として実際の埋葬費用が支給されます。
被扶養者が亡くなった場合も、被保険者に家族埋葬料として5万円が支給されます。
葬祭費については国民健康保険でも自治体ごとに制度が設けられていますが、金額等は自治体によって異なります。
低所得の年金生活者には「月5,620円」を基準に上乗せ
社会保険とは別に、「給付金」という名前で実際に現金が上乗せされる制度もあります。
それが年金生活者支援給付金です。
2026年度の老齢年金生活者支援給付金は、
月額5,620円を基準
として、国民年金保険料の納付期間などに応じて金額が計算されます。
所得が一定以下で、65歳以上の老齢基礎年金受給者であること、同一世帯全員が市町村民税非課税であることなどが条件です。
満額相当なら、
年間約6万7,440円
です。
しかも一度限りの給付金ではありません。
厚生労働省によれば、支給要件を満たしている間は継続して受け取れる恒久的な制度です。
障害年金・遺族年金にも「支援給付金」がある
年金生活者支援給付金は老齢年金だけではありません。
2026年度は、
- 障害基礎年金2級:月5,620円
- 障害基礎年金1級:月7,025円
- 遺族基礎年金:月5,620円
が基準額となっています。
それぞれ所得要件があります。
特に遺族年金は2028年4月から制度そのものが大きく変わるため、今後さらに注意が必要です。
「保険料を払っている=自動でもらえる」とは限らない
ここで最も注意したいのが、申請です。
社会保障制度には、
本人が請求しなければ受け取れない給付
が数多くあります。
傷病手当金、埋葬料、高額療養費、年金生活者支援給付金などは、それぞれ所定の手続きが必要になる場合があります。
つまり「制度を知らない」というだけで、本来受けられるはずのお金を受け取らないまま終わる可能性があります。
社会保険料は単なる「毎月引かれるお金」ではありません。
病気、出産、死亡、老後など、人生の大きなリスクに備えるための仕組みでもあります。
この記事のポイント
- 日本国憲法25条は「健康で文化的な最低限度の生活」を国民の権利として規定
- 「すべての人がすべての給付を無条件でもらえる」という意味ではない
- 傷病手当金は給与のおおむね3分の2が基準
- 出産育児一時金は原則1児50万円
- 高額な医療費には高額療養費制度がある
- 健康保険の埋葬料は5万円
- 低所得の年金受給者には月5,620円を基準とした年金生活者支援給付金
- 給付によっては本人からの申請が必要




