職場にいる「なぜか誰も注意できない古株」。仕事中は私語ばかり、暇さえあればスマホを触り、若い正社員には昔からの知り合いのような態度。注意されると「俺はこの会社のことをお前より知ってる」と逆ギレ――。

しかも、もともとはその会社の正社員。責任ある立場で働くのが嫌になって一度退職したものの、しばらくして同じ会社へアルバイトとして復帰していた……。

そんな人に「少し静かにしてもらえませんか」と言っただけで、自分の方が悪者にされる。職場では実際に起こり得る理不尽な構図です。

そこで今回は、そんな状況を題材にした架空のスカッとストーリーとともに、意外と知られていない「アルバイトでも失業給付の対象になる」「65歳以上には高年齢求職者給付金がある」「前の会社への出戻りでは再就職手当が原則もらえない」という雇用保険のルールを解説します。

最初に:問題なのは「中高年」「男性」「アルバイト」であることではありません。私語、業務中の私的スマホ利用、業務指示への反発、周囲の仕事を妨げる行為など、具体的な勤務態度が問題です。また、若い正社員にタメ口で話すこと自体が直ちに違法・懲戒対象になるわけでもありません。

【架空ケース】正社員を辞めたのに、なぜかアルバイトで戻ってきた古株

物流会社で働く私の部署には、60代手前のアルバイトAさんがいました。

Aさんはもともと、この会社で20年以上働いた正社員。ところが数年前、仕事の遅れや担当業務の放置を何度も指摘されるようになり、「こんな責任ばかり負わされるなら辞める」と自ら退職しました。

ところが半年ほどすると、人手不足を理由にアルバイトとして復職。

以前より責任の軽い仕事を担当するようになったものの、態度だけは昔のままでした。

若い正社員には「おい、それやっとけよ」「昔はこんなやり方じゃなかったぞ」とタメ口。作業の合間にはスマホを何度も確認し、古くから勤務している正社員が近くを通れば、その場で10分、20分と雑談が始まります。

本人は「昔の仲間と話しているだけ」と笑っていましたが、周囲は電話対応や入力作業に集中できません。

「少し静かにしてください」と言った瞬間、逆ギレ

ある日、Aさんと古株社員の雑談が30分近く続きました。

私は締切のある資料を作成していたため、「申し訳ないですけど、少し声を落としてもらえませんか」と伝えました。

するとAさんの顔色が変わりました。

「なんだその言い方は」

「俺はお前が入るずっと前からここにいるんだぞ」

「バイトだからって馬鹿にしてんのか?」

私は「雇用形態の話はしていません。仕事中なので静かにしてほしいだけです」と答えました。

しかし、古株社員まで「まあまあ、昔からこういう人だから」とAさんをかばいます。

翌日からAさんは、私とすれ違うたびに大きなため息。周囲には「最近の若いやつは神経質だ」と話していました。

決定打は「感情」ではなく勤務記録だった

私はそれ以上言い争うのをやめました。

代わりに、自分が直接確認した事実だけをメモしました。

「○月○日 10:15~10:34 私語」「○月○日 14:20 業務中に私用スマホ」「○月○日 業務依頼に対して『正社員がやればいい』と発言」。

同じ頃、別部署からも「Aさんに頼んだ作業が終わっていない」「確認すると他の人と話していた」という報告が複数上がり始めました。

そこで会社は、Aさんだけを狙い撃ちにするのではなく、部署全体について作業時間、担当件数、未処理案件、私用スマホのルールを改めて確認することにしました。

その結果、Aさんの処理件数は同じ時間働く他のスタッフより大幅に少なく、注意後も改善が見られないことが明らかになりました。

スカッと展開――「昔からいる」は免罪符にならなかった

会社はAさんに面談を行い、勤務時間中の私語、スマホ利用、業務指示への対応について正式に改善を求めました。

ところがAさんは、面談でも「俺は元正社員だ」「会社のことを誰より知っている」と主張。

その後も勤務態度はほとんど変わりませんでした。

会社は就業規則と雇用契約に沿って段階的に注意・指導を行いましたが改善が確認できず、契約期間満了時に次回更新を行わない判断をしました。

最終勤務日。

Aさんはいつものように古株社員へ話しかけましたが、以前のように長話に付き合う人はいませんでした。

「昔は正社員だった」「会社を知っている」という肩書きより、今の仕事をきちんとするかどうかが評価された瞬間でした。

このストーリーは架空です。また、現実の会社が「うるさいから」「気に入らないから」という理由だけで自由に解雇できるわけではありません。厚生労働省は、解雇には客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要と説明しています。有期契約の雇止めにも、契約更新への合理的期待などに応じたルールがあります。

「仕事しない人」を注意するとき、人格ではなく事実を残す

職場でトラブルになるのは、「あの人は無能」「おっさんだから使えない」といった人格評価です。

会社が判断しやすいのは、次のような具体的な事実です。

感情的な表現事実として整理する例
「いつも仕事をしない」「○月○日の依頼3件のうち2件が締切まで未処理だった」
「ずっとうるさい」「10:10~10:35まで業務と関係のない会話が続き、電話対応に支障が出た」
「スマホばかり」「勤務中に私用スマホを複数回操作していた」
「態度がでかい」「業務依頼に対して『正社員がやればいい』との発言があった」

年齢・性別・雇用形態ではなく、具体的な行動と業務への影響を分けて伝える方が、職場改善につながりやすくなります。

現実には「勤務態度が悪い=即クビ」ではない

スカッと系の話では「翌日、クビになりました」で終わりがちですが、現実の労務管理はもっと慎重です。

厚生労働省は、解雇について、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は無効になると説明しています。

勤務態度や職務規律違反が問題になっていても、1回の失敗だけで直ちに解雇できるとは限りません。行為の程度、会社への影響、改善指導の有無、本人の事情などが考慮されます。

有期契約のアルバイトについても、契約期間中の解雇には「やむを得ない事由」が必要です。また、何度も更新されており、本人に更新への合理的期待がある場合などには、雇止めが自由に認められないこともあります。

ここから給付金|アルバイトでも「失業給付」の対象になり得る

「バイトだから失業保険はない」と思っている人は少なくありません。

しかし、2026年9月時点では、パート・アルバイトでも原則として次の2条件を満たせば雇用保険の被保険者になります。

  • 1週間の所定労働時間が20時間以上
  • 31日以上引き続き雇用される見込みがある

呼び方が「アルバイト」「パート」であるかどうかは決定的ではありません。要件を満たす場合、本人や会社の希望にかかわらず原則として雇用保険の加入対象です。

今回の架空ケースでも:Aさんが週20時間以上・31日以上の雇用見込みなどの加入要件を満たしていれば、アルバイトでも雇用保険に加入している可能性があります。

ただし「前の会社にバイトで出戻り」では再就職手当は原則対象外

今回の設定に最も関係する給付が再就職手当です。

再就職手当は、雇用保険の基本手当を受けられる人が、所定給付日数を一定以上残した状態で早期に安定した職業へ再就職した場合に支給される制度です。

ところが、重要な条件があります。

厚生労働省のQ&Aでは、再就職手当の支給要件として、「離職前の事業主に再び雇用されたものでないこと」を明記しています。

つまり、正社員を辞めた後、同じ会社へアルバイトとして戻ったからといって、再就職手当を受け取れるわけではありません。

意外な落とし穴:雇用形態を「正社員→アルバイト」に変えても、勤務先が離職前と同じ事業主なら、再就職手当のこの要件を満たしません。関連会社など、前職と資本・人事・取引等で密接な関係にある事業主への再就職も対象外になる場合があります。

再就職手当はいくら?

支給要件をすべて満たす場合、再就職手当は基本手当の支給残日数に応じて計算されます。

  • 支給残日数が所定給付日数の3分の2以上:基本手当日額×支給残日数×70%
  • 支給残日数が所定給付日数の3分の1以上:基本手当日額×支給残日数×60%

ただし、同じ会社へ出戻った場合など支給要件を満たさなければ、この計算以前に対象外となります。

65歳以上のアルバイトなら「高年齢求職者給付金」

「おっさんバイト」が65歳以上だった場合は、通常の基本手当とは別に高年齢求職者給付金を確認します。

65歳以上でも、雇用保険の加入要件を満たして働いている人は「高年齢被保険者」となります。

その人が離職し、離職日前1年間に被保険者期間が6か月以上あるなどの要件を満たし、失業認定を受けた場合、原則として次の一時金が支給されます。

雇用保険の算定基礎期間高年齢求職者給付金
1年未満基本手当日額の30日分
1年以上基本手当日額の50日分

「65歳を超えたら雇用保険は一切ない」というわけではありません。

65歳未満なら通常の基本手当を確認

65歳未満で雇用保険の被保険者として働き、離職した場合は、被保険者期間や離職理由などの要件を満たせば通常の基本手当(いわゆる失業給付)を受けられる可能性があります。

契約期間満了、雇止め、自己都合退職、解雇などによって、離職理由の扱いや給付日数が変わる場合があります。

離職票に記載された理由に納得できない場合は、受給手続きの際にハローワークへ事情を伝え、確認を求めることができます。

失業給付を受けながらアルバイトするなら申告が必要

基本手当の受給中や給付制限期間中にアルバイトをする場合、その就労日などは失業認定申告書へ正確に申告する必要があります。

さらに、週20時間以上・31日以上の雇用見込みなど、雇用保険の一般被保険者となる条件で働く場合は、「就職」と扱われることがあります。

「短時間のバイトだから黙っていても大丈夫」と考えるのは危険です。働き始める際はハローワークへ確認してください。

今回の架空Aさんが不正受給したという設定ではありません。ここでは一般論として、退職後にアルバイトへ戻る場合の雇用保険ルールを解説しています。

雇用保険を受けられないなら「月10万円」の求職者支援制度

雇用保険を受給できない人でも、再就職を目指している場合には求職者支援制度があります。

要件を満たせば、無料の職業訓練を受けながら、

  • 職業訓練受講手当:月10万円
  • 通所手当:月上限42,500円
  • 寄宿手当:月10,700円

を受けられる可能性があります。

ただし、「仕事をしたくない人が毎月10万円もらう制度」ではありません。ハローワークへの求職申込み、働く意思・能力、職業訓練の必要性、収入・資産などの要件があります。

会社側も「古株だから」で放置しない方がいい

こうした職場問題を悪化させるのは、本人だけとは限りません。

「昔からいるから」「元正社員だから」「あの人はそういう人だから」と周囲が問題を放置すると、真面目に働いている人ほど不公平感を持ちます。

特定の人だけを感情で排除するのではなく、私用スマホ、休憩、私語、業務指示、処理件数などのルールを全員に共通して適用する方が、職場としても説明しやすくなります。

スカッとするのは誰かが破滅すること以上に、「声が大きい古株が得をする職場」から「今の仕事ぶりで評価される職場」へ変わることです。

職場で同じ状況になったら、この順番

  1. その場で人格攻撃をしない:「うるさい」「無能」ではなく、業務上困っていることを短く伝える。
  2. 改善しなければ事実を記録:日時、未処理業務、発言、業務への影響。
  3. 直属上司・人事へ相談:年齢や雇用形態ではなく勤務上の問題として伝える。
  4. 会社側はルールを共通化:スマホ・私語・業務指示などを全員に同じ基準で適用。
  5. 処分・雇止めは法的ルールに沿って判断:感情的な即時解雇を避ける。
  6. 離職した本人は雇用保険を確認:65歳未満なら基本手当、65歳以上なら高年齢求職者給付金など。

この記事のポイント

  • 前半の「古株おっさんバイト」ストーリーは架空ケース
  • 問題なのは年齢・性別・アルバイトという属性ではなく、具体的な勤務態度
  • 勤務態度が悪くても会社が自由に即解雇できるわけではない
  • パート・アルバイトでも週20時間以上・31日以上の雇用見込みがあれば原則雇用保険の対象
  • 離職前と同じ会社へ再雇用された場合、再就職手当は原則として支給要件を満たさない
  • 再就職手当は支給残日数に応じ基本手当日額×残日数×60%または70%
  • 65歳以上の高年齢被保険者が失業した場合、要件を満たせば30日分または50日分の高年齢求職者給付金
  • 雇用保険を受けられない求職者には月10万円の求職者支援制度もある

よくある質問

Q:アルバイトでも失業保険に入れますか?

2026年9月時点では、原則として週の所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用見込みがあれば、パート・アルバイトでも雇用保険の被保険者になります。

Q:正社員を辞めて同じ会社へバイトで戻ったら再就職手当をもらえますか?

原則として対象外です。再就職手当の支給要件には「離職前の事業主に再び雇用されたものでないこと」が含まれています。

Q:65歳以上のバイトにも失業給付はありますか?

雇用保険の高年齢被保険者として要件を満たしていた人が離職した場合、高年齢求職者給付金の対象になる可能性があります。算定基礎期間1年未満なら基本手当日額30日分、1年以上なら50日分です。

Q:私語やスマホばかりなら即クビにできますか?

一律には言えません。解雇には客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要です。勤務態度、注意・指導の経緯、改善状況、就業規則などを総合的に確認します。

Q:若い正社員にタメ口を使うことは処分理由になりますか?

タメ口そのものが直ちに違法・懲戒対象になるわけではありません。侮辱、威圧、業務妨害、指示違反など具体的な行為があるかで考える必要があります。

Q:失業給付を受けながらバイトしても大丈夫ですか?

働いた日や収入などを正確に申告する必要があります。また、週20時間以上・31日以上の雇用見込みなどの条件で働けば「就職」と扱われる場合があります。事前にハローワークへ確認してください。

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