早朝、自宅の窓から突然聞こえてきた「トントントントン」という音。カーテンの向こうにいたのは、裸足の女性でした。

長崎放送が2026年9月7日から8日にかけて報じたニュースでは、突然自宅を訪れた女性に対し、母親と娘たちが状況を判断しながら連携して対応。女性の安全確保につなげたとして、警察から感謝状が贈られました。

見知らぬ人が早朝に窓をたたくという不安な状況でありながら、家族だけで無理に解決しようとせず、警察につなぎ、女性を見守った判断が結果的に早期保護につながりました。

このニュースをきっかけに確認しておきたいのが、家族がひとりで外出して行方が分からなくなった場合の公的支援です。認知症などによるひとり歩きに備え、自治体によってはGPS端末の貸与、SOSネットワーク、見守りサービスを用意しています。また、家族を介護するため仕事を休む場合には、要件を満たせば賃金の67%相当の介護休業給付を受けられる可能性があります。

重要:今回保護された女性について、認知症であったという報道は確認できません。本記事ではニュースの女性を認知症と推定していません。以下は「家族のひとり歩き・行方不明に備える一般的な公的支援」として紹介します。

早朝に突然「トントントントン」…カーテンの向こうに裸足の女性

長崎放送によると、出来事は早朝に起きました。家の窓をたたく音に気付き、カーテンの向こうを確認すると、そこには裸足の女性がいました。

記事では、女性が「葬式に行く途中で…」と話す場面や、母親が寝起きの娘たちに役割を託し、家族で女性を見守った様子が紹介されています。

見知らぬ人が突然自宅を訪れた以上、家族にとって恐怖や警戒心があったことは自然です。それでも女性を放置せず、警察などへつなげるために動いたことが評価され、母娘には感謝状が贈られました。

このニュースから学べること:異変を感じた人を保護する際、自分たちだけで抱え込む必要はありません。相手の安全と自分自身の安全を確保しながら、警察や公的機関につなぐことが重要です。

家族が突然いなくなったら「まず家族だけで探す」は避ける

認知症などのある家族が外出したまま戻らない場合、「もう少し近所を探してから警察へ」と考える人もいるかもしれません。

しかし、長崎県は、認知症の人が行方不明になった場合について、すぐに最寄りの警察署へ連絡するか110番通報するよう案内しています。

時間が経過するほど行動範囲が広がり、早期発見が難しくなるためです。県は「家族だけで探そうとせず、すぐ警察に連絡することが発見の早道」としています。

同時に、住んでいる市町の高齢者福祉担当課へ相談すれば、県内の他自治体や全国の都道府県へ照会できる場合があります。

① 長崎市では「GPS小型発信機」を貸与

自治体によっては、行方不明になってから探すだけでなく、位置情報を確認するための機器を事前に利用できる制度があります。

たとえば長崎市では、認知症などによりひとり歩きする可能性がある人の家族向けに、GPS小型発信機を貸し出す「徘徊高齢者等家族支援事業」を実施しています。

位置情報を確認できる発信機には、現場への駆けつけサービス付きのタイプや、靴底にGPSを収納できる保険付きサービスなどがあります。

申請は地域包括支援センターや担当ケアマネジャーを通じて行います。

給付金ではありません:GPS支援は、現金を受け取る制度ではなく、機器の貸与や見守りサービスによって家族の負担を軽減する支援です。内容・費用・対象条件は自治体によって異なります。

② 「SOSネットワーク」に事前登録しておく

長崎市では「徘徊高齢者等SOSネットワーク事業」も実施しています。

認知症の高齢者などの情報をあらかじめ登録しておくことで、行方不明になった際、捜索に協力する介護事業所などへ顔写真や特徴など必要な情報を一斉送信する仕組みです。

ほかにも、家族などが行方不明者情報を配信できる「みまもりあいアプリ」、警察・消防・自治会などとの連携、防災行政無線など、複数の捜索ルートがあります。

家族だけで車を走らせ、何時間も探し回るより、早い段階で地域のネットワークを動かせるよう、事前登録を検討しておく意味があります。

③ 家族介護で仕事を休むなら「介護休業給付」がある

家族に介護が必要になったとき、働く人にとって大きな問題になるのが収入減少です。

雇用保険の被保険者が一定の要件を満たして介護休業を取得した場合、介護休業給付を受け取れる可能性があります。

給付額は原則として、

休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%

で計算されます。

介護休業前のおおよその月給介護休業給付の目安
月15万円程度月約10万円
月20万円程度月約13万4,000円
月30万円程度月約20万1,000円

厚生労働省によると、同じ対象家族について通算93日を上限として3回まで、要件を満たす介護休業が給付対象となります。

「介護したら67%もらえる」ではありません:雇用保険の加入状況、介護休業の取得、対象家族の状態などの支給要件があります。また休業中に賃金が支払われた場合は、給付額が減額・不支給になる場合があります。

④ 介護サービス代が高くなったら「高額介護サービス費」

介護保険サービスの自己負担は原則1割で、一定以上の所得がある人は2割または3割です。

ただし、介護サービスを多く利用すると、毎月の自己負担が大きくなることがあります。

そこで利用できるのが高額介護サービス費です。

1か月の介護サービス利用者負担額が、所得に応じた上限額を超えた場合、申請により超過分が介護保険から支給されます。

主な所得区分負担上限(月額)
生活保護受給者など個人15,000円など
市町村民税非課税世帯世帯24,600円。条件により個人15,000円
一般的な課税世帯(一定所得未満)世帯44,400円
一定以上の高所得世帯世帯93,000円または140,100円

これは実際に「お金が戻る」制度:高額介護サービス費は、対象となる自己負担が上限を超えた場合、その超過分を支給する仕組みです。食費・居住費、福祉用具購入費など一部対象外となる費用があります。

⑤ 地域包括支援センターは「介護認定前」でも相談先になる

「まだ要介護認定を受けるほどではない」「最近、家の場所を忘れることがある」「外出すると帰宅に時間がかかる」――そんな段階では、どこへ相談すればいいか分からない人も少なくありません。

地域包括支援センターは、高齢者本人や家族の総合相談窓口です。

介護保険サービスだけでなく、認知症の相談、見守り、権利擁護、地域の福祉サービスなどについて相談できます。

長崎市では認知症初期集中支援チーム、認知症カフェ、認知症スクリーニング検査なども案内しており、早い段階から医療・介護へつなぐ支援があります。

「まだ認知症ではないから何もできない」は誤解

家族が何度も道に迷うようになったり、目的地を説明できなくなったりしても、「認知症と診断されたわけではないから」と支援を使わずにいるケースがあります。

しかし自治体によっては、要介護認定の有無だけで一律に対象を決めていない見守り事業があります。

長崎市でも、徘徊高齢者等家族支援事業について、要介護認定の有無にかかわらず速やかに申請できるよう対象要件を見直した経緯があります。

「診断が確定してから」ではなく、家族が心配を感じ始めた段階で地域包括支援センターへ相談する方が、選択肢を増やせます。

知らない人が自宅を訪ねてきたときの対応

今回の母娘のように人を助けたい気持ちは大切ですが、自分や家族の安全も同じくらい重要です。

  • 異変がある場合は警察・救急へ連絡する
  • 危険を感じる場合は無理に自宅へ入れない
  • 寒さ・暑さ・けがなど生命に関わる状態を確認する
  • 相手を一人で遠方へ送り届けようとしない
  • 家族や警察など第三者が来るまで可能な範囲で見守る

相手が混乱していたり、会話がかみ合わなかったりする場合には、強く問い詰めるより、まず安全な場所を確保して公的機関につなぐことが重要です。

家族の行方不明に備えて「今日できること」

  1. 本人の最近の写真を保存する:顔がはっきり分かる写真をスマホにも保存。
  2. 服装・靴・持ち物を把握する:行方不明時の捜索情報になります。
  3. 地域包括支援センターを調べる:電話番号を家族で共有。
  4. 自治体のSOSネットワークを確認:事前登録できる場合があります。
  5. GPS・見守り端末を検討:自治体の貸与制度がないか確認。
  6. 働いている家族は介護休業制度を確認:休業給付の支給要件も勤務先・ハローワークで確認。

この記事のポイント

  • 早朝、裸足の女性が住宅の窓をたたき、母娘が連携して安全確保に協力
  • 母娘の対応が評価され、警察から感謝状が贈られた
  • 今回の女性が認知症だったという報道は確認されていない
  • 認知症などの家族が行方不明になった場合、長崎県はすぐ警察へ連絡するよう案内
  • 長崎市ではGPS小型発信機の貸与やSOSネットワークを実施
  • 一定要件を満たす介護休業では休業開始時賃金の67%相当の介護休業給付がある
  • 介護休業給付は同一対象家族について通算93日・3回までが基本
  • 介護サービス自己負担が上限を超えた場合、高額介護サービス費として超過分が支給されることがある

よくある質問

Q:今回の裸足の女性は認知症だったのですか?

2026年9月8日時点で確認できた報道では、認知症だったとは記載されていません。本記事では認知症と推定せず、一般的な行方不明・見守り支援として制度を紹介しています。

Q:家族が認知症でいなくなったら、何時間待ってから警察へ連絡しますか?

待つ必要はありません。長崎県は、認知症の人が行方不明になった場合はすぐに最寄りの警察署または110番へ連絡するよう案内しています。

Q:GPS端末は無料でもらえますか?

自治体によって制度が異なります。長崎市では小型GPS発信機の貸与制度がありますが、現金給付ではありません。利用者負担や対象条件は自治体へ確認してください。

Q:親の介護で仕事を休んだら給料の67%が必ずもらえますか?

必ずではありません。雇用保険の被保険者が一定の要件を満たして介護休業を取得した場合、原則として休業開始時賃金日額×支給日数×67%で介護休業給付が計算されます。

Q:介護費が高い場合に現金が戻る制度はありますか?

高額介護サービス費があります。介護保険サービスの月々の自己負担額が所得区分ごとの上限を超えた場合、申請により超過分が支給されます。

Q:要介護認定をまだ受けていなくても相談できますか?

地域包括支援センターでは、認知症や高齢者の生活に関する相談を幅広く受け付けています。要介護認定前でも、心配があれば相談できます。

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