住宅ローンの金利上昇が、いよいよ家計を直撃しています。2026年9月8日に関西テレビが報じた事例では、15年前に4,200万円の戸建てを購入した61歳男性の住宅ローン返済額が、当初の月約9万4,000円から1万円以上増加。ボーナス払いも含めると、年間およそ18万円の負担増になったといいます。

一方で、「返済が苦しくなったら家を売るしかない」とは限りません。金融機関に早めに相談し、返済期間を延長したり、一時的に元金返済を止めて利息のみを支払ったりする「リスケジュール」が認められる場合があります。

さらに、条件を満たす人には住宅ローン減税などの税負担軽減策もあります。ただし、住宅ローン返済そのものを国が肩代わりする一般的な「給付金」があるわけではありません。本記事では、金利上昇時に使える対策と公的支援を整理します。

注意:住宅ローンの返済条件変更は金融機関の審査が必要です。「利息だけ払えば誰でも家を残せる」という制度ではありません。また、返済期間を延ばせば月々の支払額を下げられる一方、総支払利息が増える可能性があります。

住宅ローンが年間18万円増…何が起きている?

長期金利の指標となる10年物国債利回りは、2026年9月初旬に一時3%台へ上昇し、およそ30年ぶりの高い水準となりました。住宅ローン市場でも低金利時代からの転換が鮮明になっています。

報道に登場した61歳男性は、15年前に変動金利で住宅ローンを組み、当初は毎月約9万4,000円を返済していました。しかし、ここ数年の金利上昇を受けて月額が1万円以上増え、ボーナス返済分も合わせて年間約18万円の負担増となりました。

物価高に加え、定年後の収入低下も重なれば、月1万円台の増加でも家計に与える影響は小さくありません。

金利の見方:10年国債利回りの上昇は主に固定金利型住宅ローンへ影響しやすい一方、変動金利は短期プライムレートなど短期金利の影響を受けます。「長期金利が3%になったから、既存の変動住宅ローンがそのまま3%になる」という意味ではありません。

変動金利の人は「5年ルール」だけで安心できない

一部の金融機関では、元利均等返済の変動金利住宅ローンについて、返済額を5年間変えない「5年ルール」や、見直し後の返済額を前回の125%までに抑える「125%ルール」を採用しています。

ただし、この仕組みは金利上昇そのものを止める制度ではありません。毎月の返済額が据え置かれていても、その内訳では利息の割合が増え、元金の減り方が遅くなる可能性があります。

また、すべての銀行・すべての住宅ローンに5年ルールや125%ルールがあるわけではありません。自分の契約内容は返済予定表や金融機関のマイページで確認する必要があります。

家を売らずに「利息のみ」にするリスケジュールとは?

報道の男性は、住宅トラブルの支援団体へ相談した結果、1年間は住宅ローンの元金返済を止め、利息のみを支払う形に変更し、返済期間を延長する対応を選びました。

こうした返済条件の変更は一般に「リスケジュール」や「リスケ」と呼ばれます。具体的な内容は金融機関によって異なりますが、次のような方法があります。

  • 返済期間を延長して月々の返済額を下げる
  • 一定期間、元金の返済を据え置く
  • 一定期間、利息のみを支払う
  • ボーナス返済を取りやめ、毎月返済へ組み替える
  • 元金均等返済と元利均等返済を変更する

住宅金融支援機構も、収入減少などで返済が困難になった利用者向けに返済方法変更メニューを用意しています。一定要件を満たす場合、返済期間の延長などによって返済額を減らすことができます。

重要なのは「延滞する前」の相談:住宅ローンの支払いを何か月も滞納してから相談するより、「来月から厳しくなりそう」という段階で金融機関へ相談した方が、選択肢を確保しやすくなります。

リスケのメリットと注意点

項目内容
メリット毎月の返済負担を一時的に下げられる可能性がある。自宅をすぐに売却せず、収入回復まで時間を確保できる。
デメリット返済期間が長くなれば、総支払利息が増える可能性がある。
利用条件金融機関による審査がある。誰でも希望通りに変更できるわけではない。
相談時期延滞前が望ましい。収入減少や退職などが見込まれた時点で相談。

60歳以上なら「リ・バース60」で借り換える方法も

高齢になってから住宅ローン返済が重くなった場合、住宅金融支援機構の住宅融資保険を活用した「リ・バース60」という選択肢もあります。

リ・バース60は原則60歳以上が対象で、住宅ローンの借り換えにも利用できます。大きな特徴は、毎月の支払いが原則として利息のみになることです。

元金は契約者が亡くなった際に、相続人が一括返済するか、担保となっている住宅・土地を売却して返済します。

ただし、担保評価額に対する融資限度額が設定されているため、既存住宅ローンの残高全額を必ず借り換えられるわけではありません。また、変動金利型を選んだ場合は金利上昇で毎月の利息支払額が増える可能性があります。

リスケとの違い:通常の住宅ローンを一時的に「利息のみ」へ変更するリスケと、リ・バース60へ借り換えることは別の仕組みです。リ・バース60は死亡時の元金返済・担保売却まで含めた住宅ローン商品です。

給付金はある?まず確認したい「住宅ローン減税」

住宅ローン利用者にとって最も代表的な公的支援は「住宅ローン減税」です。ただし、これは現金を振り込む給付金ではなく、所得税などから一定額を差し引く税額控除です。

2026年度税制改正では、住宅ローン減税の適用期限が5年間延長され、2026年1月1日から2030年12月31日までに入居する住宅が対象期間に含まれることになりました。

基本的な控除率は年末の住宅ローン残高の0.7%で、住宅の省エネ性能、入居年、世帯属性などによって借入限度額や控除期間が異なります。

金利上昇との関係:住宅ローン減税は「支払った利息の0.7%が戻る制度」ではありません。基本的に年末ローン残高を基準に計算するため、住宅ローン金利が上がったから控除率も上がるわけではありません。

今回の61歳男性が住宅ローン減税を新たに使えるという話ではない

報道の男性は15年前に住宅を購入しています。本記事で現行の住宅ローン減税を紹介しているのは、住宅ローン利用者が確認すべき代表的な公的支援だからです。

すでに控除期間を終えている人が、金利上昇を理由として住宅ローン減税を新たに再開できる制度ではありません。利用できるかどうかは、住宅取得・入居年や住宅性能、所得、借入期間などで判断されます。

「住居確保給付金で住宅ローンを払える」は誤解

生活が苦しくなった人向けの公的支援として「住居確保給付金」がありますが、ここは特に注意が必要です。

住居確保給付金は、離職や収入減少など一定要件を満たす人について、自治体が賃貸住宅の家賃を原則3か月、最長9か月まで支援する制度です。

持ち家の住宅ローン返済額を給付してくれる制度ではありません。「住宅に困ったら住居確保給付金でローンを払える」と紹介するのは誤りです。

支援住宅ローン返済に使える?ポイント
住宅ローン減税直接返済する給付ではない所得税等の税額控除。対象要件あり。
住居確保給付金原則不可賃貸住宅の家賃支援。持ち家ローンの返済制度ではない。
住宅ローンのリスケ返済条件を変更給付金ではなく金融機関との契約変更。審査あり。
リ・バース60借換えに利用可能原則60歳以上。毎月の支払いは利息のみ。

自治体の給付金・商品券も家計防衛には使える

住宅ローンそのものを支払う専用給付金ではなくても、自治体が実施する物価高対策の現金給付、商品券、生活応援ポイントなどを受けられる場合があります。

食費や光熱費を商品券・ポイントでまかなえれば、その分だけ住宅ローン返済に回せる現金を残すことができます。

ただし、自治体ごとに対象者、基準日、所得制限、申請期限が違います。「住宅ローンを組んでいる人ならもらえる給付金」ではないため、お住まいの自治体の公式サイトで確認してください。

返済が厳しくなったら確認したい5つの選択肢

1.まず借入先の金融機関に相談

最優先は、現在住宅ローンを返済している銀行などへの相談です。返済期間延長、元金据え置き、ボーナス払い変更などが可能か確認します。

2.借り換えを試算する

より低い金利の金融機関へ借り換える方法があります。ただし、登記費用、事務手数料、保証料などの諸費用も含めて比較する必要があります。

3.固定金利への切り替えを検討

将来の金利上昇が不安な場合は固定金利へ変更することで返済額を確定できます。ただし、2026年9月時点では固定金利が変動金利より大幅に高いケースがあるため、「今すぐ固定が正解」とは一概に言えません。

4.リスケジュールを相談する

収入減少や定年などで一時的に返済が難しい場合、元金据え置きや返済期間延長を相談します。

5.60歳以上ならリ・バース60も比較

既存ローンの残高、住宅の担保評価、相続方針などが合えば、毎月の支払いを利息だけにする借り換えも選択肢になります。

やってはいけないのは「延滞するまで何もしない」こと

住宅ローン返済が苦しくなったとき、最も避けたいのは、相談せずに滞納を重ねることです。

延滞が続けば、金融機関から督促を受け、最終的には期限の利益を失い、残債の一括請求や競売につながる可能性があります。返済が苦しくなる兆候があれば、家計の赤字が深刻になる前に金融機関へ相談しましょう。

「今月は払えるが、半年後に定年で収入が下がる」「ボーナスが減りそう」といった段階でも相談する価値があります。

この記事のポイント

  • 住宅ローン金利上昇で年間約18万円の負担増となった実例が報じられた
  • 返済が難しい場合、返済期間延長や一時的な利息払いのみの「リスケ」が認められる場合がある
  • リスケは給付金ではなく、金融機関との返済条件変更
  • 60歳以上なら「リ・バース60」で既存住宅ローンを借り換えられる場合がある
  • 住宅ローン減税は税額控除であり、ローン返済額を直接給付する制度ではない
  • 住居確保給付金は原則として賃貸住宅の家賃支援で、住宅ローン返済には使えない
  • 返済が苦しくなったら延滞前に金融機関へ相談することが重要

よくある質問

Q:住宅ローンが払えないとき、国から給付金をもらえますか?

住宅ローン返済額を全国一律で肩代わりする一般的な給付制度はありません。住宅ローン減税、自治体の各種生活支援、金融機関の返済条件変更などを個別に確認します。

Q:住宅ローンを1年間、利息だけにできますか?

金融機関の審査や契約内容によります。報道では実際に1年間の利息払いのみへ変更した事例がありますが、すべての利用者が同じ条件に変更できるわけではありません。

Q:利息だけ払えば元金は減りますか?

原則として減りません。そのため返済再開後の負担や総支払利息が増える可能性があります。

Q:住居確保給付金で住宅ローンを支払えますか?

原則としてできません。住居確保給付金は一定の要件を満たす賃貸住宅の家賃を支援する制度です。

Q:60歳を過ぎても住宅ローンを借り換えられますか?

住宅金融支援機構の「リ・バース60」は原則60歳以上を対象とし、既存の住宅ローンの借換資金にも利用できます。ただし、担保評価や返済状況などの要件があります。

Q:住宅ローン減税は2026年もありますか?

あります。2026年度税制改正で適用期限が5年間延長され、一定要件を満たす2026年から2030年までの入居者が対象となります。

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