
政府は2027年度から、所得に応じて支援額を変える新たな給付制度「就業者負担軽減支援金」を先行導入する方針です。2026年9月15日に閣議決定された大綱では、単なる低所得世帯向けの一律給付ではなく、働いて得た所得、前年の合計所得、税・社会保険料の負担、扶養する子どもの人数などを踏まえて個人ごとの支援額を決める仕組みが示されました。
この制度は国の全国制度として設計されていますが、全国民・全世帯へ一律に現金を配る制度ではありません。主な対象は、一定の勤労所得があり、所得や税・社会保険料負担などの要件を満たす中低所得の就業者です。具体的な「年収○万円以下」「1人○万円」といった金額はまだ決定していません。
政府は同時に、現在8%の軽減税率が適用されている飲食料品について、2027年4月1日から2年間、税率を1%とする改正案を示しています。さらに、飲食料品にかかる消費税1%相当分の範囲で所得連動型給付を先行実施し、全体として飲食料品の消費税負担の「実質ゼロ化」を目指す考えです。
「消費税1%」と「給付1%分」を混同しないでください。 支援金は「各家庭が食料品に支払った消費税1%をそのまま払い戻す」制度ではありません。支給額は、前年所得や扶養児童の有無・人数等に応じた別の算定式で決まる設計です。
制度概要
実施機関
国が制度を設計し、支給事務は基準日である1月1日時点の住所地の市町村が担う仕組みです。内閣官房は、国と地方が協力して制度を運営し、行政事務の負担を抑えるためのデジタルツール等を整備する方針を示しています。
対象地域
日本全国です。ただし全国民を対象とする一律給付ではありません。大綱では、受給資格を満たす人であっても、1月1日の基準日時点で日本国内に住所がない場合は支給しないとしています。
対象者
制度は世帯単位ではなく個人単位で判定します。2029年度以降の本格制度について、大綱では次の4つの要件を示しています。
| 要件 | 内容 | 具体額 |
|---|---|---|
| ① 勤労所得 | 前年の給与収入を基に算定する額と、一定額を超える事業所得・業務に係る雑所得の合計である「勤労所得」が、所得下限額を超えること。 | 未決定 |
| ② 所得上限 | 前年の合計所得金額が、扶養児童の有無・人数に応じて定める所得上限額以下であること。 | 未決定 |
| ③ 純負担 | 住民税等と社会保険料負担を基礎に算定する額から公的年金収入等を考慮した「純負担」が基準額を超えること。 | 未決定 |
| ④ 配偶者所得 | 1月1日時点で配偶者がいる場合、配偶者の前年合計所得が配偶者所得上限額以下であること。 | 未決定 |
2027年度・2028年度は「3要件」で判定
先行導入される2027年度と2028年度については、大綱の注記で、上記①~③を満たす人を対象とするとしています。つまり、この2年度は配偶者所得上限の④を適用しません。
また、本格制度では「扶養児童」を原則19歳未満として設計する一方、2027・2028年度の先行制度では16歳未満の扶養親族として扱うことも明記されています。
会社員だけでなく個人事業主・フリーランスも対象になり得る
「勤労所得」には給与だけでなく、国が定める一定額を超える事業所得や業務に係る雑所得も含める設計です。そのため、会社員・パート・アルバイトだけに限定された制度ではなく、要件を満たす個人事業主やフリーランスも対象になり得ます。ただし、事業所得・雑所得を勤労所得に算入する具体的な最低額はまだ決まっていません。
働く高齢者も対象になる可能性
年齢だけで一律に対象外とする仕組みではありません。大綱は、就労して税・社会保険料を現役並みに負担する中低所得の高齢者も対象とする考え方を示しています。一方、勤労所得のない年金収入のみの人については、勤労所得要件との関係から通常の対象とは異なります。
支給額・補助額
具体的な支給額は未決定です。 大綱は「1人3万円」「1世帯5万円」のような定額を示していません。支援金は年度単位で、前年所得と扶養児童の有無・人数に応じ、次のように増減する仕組みが示されています。
| 所得帯 | 支援額の考え方 |
|---|---|
| 低い勤労所得の範囲 | 一定の定額支援額 |
| 「逓増開始額」超~「逓増終了額」 | 所得の増加に応じて支援額を一定割合で増やす |
| その後の一定範囲 | 定額の支援基本額 |
| 「年収の壁」に直面する人等 | 時限的な就業促進特例加算を上乗せ |
| 扶養児童がいる場合 | 人数等に応じたこども加算を上乗せ |
| 所得が「逓減開始額」を超える場合 | 所得に応じて一定割合で支援額を減らし、所得上限に達すると対象外 |
最終的な支援額は1,000円単位で、端数は切り上げる設計です。
「給与収入119万円」は対象ラインではない
大綱には、支援額が増え始める「逓増開始額」を検討する際の参考として、単身者の個人住民税所得割の非課税限度額が所得45万円、給与収入119万円であることが注記されています。
重要:「年収119万円を超えれば支援金がもらえる」という決定ではありません。119万円は、支援額のカーブを設計する際に参照する現行税制上の水準として記載されている数字です。支援金の「所得下限額」や「逓増開始額」そのものは今後決定されます。
「年収の壁」向けの特例加算
政府は、社会保険料負担が急に生じる「年収の壁」などによって働く時間を抑える行動を緩和する狙いから、対象者に「就業促進特例加算」を設ける方針です。この加算は「年収の壁」が解消されるまでの時限措置と位置付けられています。
ただし、特例加算の具体的な金額や適用年収も未決定です。「106万円」「130万円」など既存の社会保険制度上の水準を、そのまま支援金の確定基準として扱うことはできません。
子どもがいる場合は「こども加算」
扶養児童がいる場合は、基本となる支援額に加えてこども加算を支給する設計です。加算額は子どもの有無・人数に応じて定額とする方針ですが、子ども1人につき何円かはまだ決まっていません。
申請期間・支給時期
支援金は年度を単位として原則年1回支給する仕組みです。ただし、2027年度分の具体的な受付開始日・初回振込日は2026年9月29日時点では公表されていません。
大綱では、市町村による認定または支援額決定後の支給事務の枠組みも示されていますが、実際の2027年度スケジュールは今後の法制化と自治体実務の確定を待つ必要があります。
申請方法
基本は、1月1日時点の住所地の市町村長に請求し、受給資格の認定を受ける仕組みです。ただし、行政側で資格と支援額を把握でき、本人が公金受取口座を登録している場合には、市町村長が本人からの請求を待たずに職権で認定できる制度設計が示されています。
申請不要になる可能性が高い人:公金受取口座を登録済みで、所得・税・社会保険料などの行政情報から受給資格と支援額が明確に確認できる人です。ただし、2027年度の実際の運用方法や通知手順は今後の正式案内を確認してください。
主な条件
- 個人単位の給付であること
- 前年に一定以上の勤労所得があること
- 前年の合計所得が所得上限額以下であること
- 税・社会保険料等の純負担が基準額を超えること
- 1月1日の基準日時点で日本国内に住所を有すること
- 2029年度以降は配偶者所得の上限要件も設ける方針
注意点
2026年9月15日に閣議決定されたのは、制度の骨格を定める「大綱」です。国税庁・財務省の消費税率引下げ特設サイトは、掲載内容について今後、法案が国会に提出され、審議を経て可決・成立した場合の内容であると明記しています。
したがって、2026年9月29日時点で「2027年に必ず○万円が振り込まれる」と断定するのは適切ではありません。今後の法案審議と、支給額・所得基準を定める具体的な制度設計を確認する必要があります。
2027・2028年度と2029年度以降は何が違う?
| 項目 | 2027・2028年度 | 2029年度以降 |
|---|---|---|
| 位置付け | 本格制度までの先行・経過措置 | 所得連動型のきめ細かな給付を本格導入 |
| 食料品消費税 | 2027年4月1日から2年間、1%とする改正案 | 臨時引下げ終了後の制度へ接続 |
| 支援金総額 | 飲食料品消費税1%相当分の範囲となるよう設定 | 恒久財源と併せて制度設計 |
| 支給要件 | 勤労所得・所得上限・純負担の3要件 | 配偶者所得上限を含む4要件を基本 |
| 扶養児童 | 16歳未満の扶養親族 | 原則19歳未満の扶養親族 |
| 金額 | 未決定 | 未決定 |
「1118億円」は1人当たりの給付原資ではない
9月29日のニュースで示された1118億円は、ユーザー提示情報では、2027年4月の飲食料品消費税率引下げや、2027年度の所得連動型給付の実施準備に向けて2026年度予算の予備費から支出する経費とされています。
この金額を対象人数で割り、「1人○円もらえる」と計算することはできません。支援金の給付総額について、大綱は2027・2028年度は「飲食料品に係る消費税1%相当分の範囲」とする考え方を示しており、準備経費と給付本体の支出は区別して読む必要があります。
一次情報確認上の留保:9月29日15時台の記事作成時点では、首相官邸の閣議一覧や財務省サイトの公開検索に9月29日の「1118億円」予備費使用資料が反映されていませんでした。そのため本記事では、1118億円の省庁別内訳・用途別内訳を推測していません。公式資料が公開された場合は、その資料に合わせて追記してください。
今のうちに確認しておけること
- 公金受取口座:マイナポータルで登録状況を確認しておく
- 所得情報:2027年度給付は前年所得を使うため、2026年分の税申告を適正に行う
- 副業・個人事業:事業所得・業務に係る雑所得がある場合、確定申告等で所得を正しく把握できる状態にする
- 扶養情報:子どもの人数が加算額や所得上限に影響する設計なので、扶養情報を正しく届け出る
- 今後の公式発表:支援基本額、所得下限・上限、こども加算、特例加算、2027年度の支給日を確認する
この記事のポイント
- 新しい所得連動型給付の正式名称は「就業者負担軽減支援金」
- 2027年度から先行導入し、2029年度から本格的な所得連動型給付へ移行する方針
- 2027・2028年度は「勤労所得」「所得上限」「税・社会保険料等の純負担」の3要件で判定
- 支給は個人単位・原則年1回で、子ども加算と「年収の壁」向け特例加算を設ける設計
- 具体的な支給額や年収ラインはまだ決まっていない
よくある質問
Q:就業者負担軽減支援金はいくらもらえますか?
2026年9月29日時点では具体額は決まっていません。政府大綱では、所得に応じた定額・逓増・逓減、就業促進特例加算、こども加算の仕組みまで示されていますが、支援基本額や各加算額は今後決定されます。
Q:年収119万円を超えれば対象ですか?
現時点では断定できません。119万円は、単身者の個人住民税所得割の非課税限度額として、大綱が「逓増開始額」を検討する際の参考に挙げた数字です。支援金の所得下限額そのものではありません。
Q:住民税非課税世帯なら自動的に対象ですか?
「住民税非課税世帯」という世帯区分だけで判定する制度ではありません。個人の勤労所得、合計所得、税・社会保険料等の純負担などを使って判定する設計です。
Q:パート・アルバイトや個人事業主も対象ですか?
対象になり得ます。大綱の「勤労所得」には給与だけでなく、一定額を超える事業所得や業務に係る雑所得も含める設計です。ただし具体的な所得下限額等は未決定です。
Q:申請は必要ですか?
原則は1月1日時点の住所地の市町村で認定を受ける仕組みですが、公金受取口座を登録し、行政側で資格と金額が明らかな場合は、本人の請求なしに市町村が職権認定できる設計です。実際の2027年度手続きは今後の正式案内を確認してください。
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- 2026年9月15日の助成金ブログ記事一覧(「就業者負担軽減支援金」の制度紹介記事を含む)
公式情報
- 内閣官房:「飲食料品に係る消費税率の引下げ」及び「給付付き税額控除」について
- 内閣官房:飲食料品消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の導入に関する大綱(2026年9月15日閣議決定)
- 首相官邸:2026年9月15日臨時閣議案件
- 国税庁・財務省:消費税率引下げ特設サイト
- 内閣官房:社会保障国民会議




