
2013年(平成25年)から段階的に行われた生活扶助基準の改定をめぐり、最高裁判所は2025年6月27日、生活扶助基準の改定が生活保護法に違反し違法であると判断しました。これを受け、厚生労働省は対象者に対する「保護費の追加給付」を進めています。
重要:今回の追加給付は、現在生活保護を受給している人だけの制度ではありません。過去に生活保護を受給していたものの、現在は受給していない世帯も対象になる場合があります。現在受給していない世帯は原則として自分で「申出」を行う必要があり、全国統一の申出期間は2026年8月1日から2027年7月31日までです。
一方、追加給付額は「1世帯○万円」のような一律額ではありません。生活保護を受給していた時期、当時の年齢、世帯人数、居住地域、各種加算の有無などを基に自治体が計算します。
最高裁判決を踏まえた生活保護費の追加給付とは?
厚生労働省は2013年から3年間かけて生活扶助基準を改定しました。その際の「デフレ調整」について、2025年6月27日の最高裁判決は、厚生労働大臣の判断過程・手続に過誤や欠落があり、生活保護法3条・8条2項に違反すると判断しました。
判決後、厚生労働省は専門委員会で対応を検討し、当時のデフレ調整率「▲4.78%」を、消費実態に基づいて再検討した「▲2.49%」の水準調整に置き換えた場合に生じる差額に相当する額を追加給付することとしました。
ポイント:2013年の引下げ分がそのまま全額返ってくる、という仕組みではありません。「従来の水準」と「新たに設定した水準」の差額を、対象期間ごとの給付率を用いて計算する仕組みです。
誰が対象?現在は生活保護を受けていない人も対象
2013年8月~2018年9月に生活保護を受給していた世帯
2013年8月から2018年9月までの間に生活保護を受給したことがある世帯は、追加給付の対象になり得ます。現在すでに生活保護から脱却している世帯も対象に含まれます。
2018年10月~2026年3月についても一部対象
2018年10月以降は、すべての生活扶助が同じ期間まで対象になるわけではありません。ただし、2026年3月までの間に、一定期間の入院・施設入所があった人、障害者加算など一部の加算が算定されていた人、毎年12月の期末一時扶助費が算定された世帯などは、該当する費目について追加給付の対象になる場合があります。
| 対象となる費目・状況 | 主な対象期間 |
|---|---|
| 居宅の基準生活費(第1類・第2類) | 2013年8月~2018年9月 |
| 入院患者日用品費、介護施設入所者基本生活費、一部の加算、期末一時扶助など | 費目により2013年8月~2026年3月まで対象になる場合あり |
| 在宅の母子加算 | 2013年8月~2018年9月 |
| 一部の冬季加算 | 2013年8月~2015年9月 |
※実際の対象期間は生活扶助の種類・加算ごとに異なります。自治体が当時の支給記録等を確認して算定します。
現在は生活保護を受給していない世帯の申出期間
全国統一の申出受付期間:
2026年8月1日~2027年7月31日
現在生活保護を受給していない世帯は、当時生活保護を受給していた自治体に対して、当時の世帯主から追加給付の申出を行います。
2026年9月16日現在、申出期間はすでに始まっています。多くの自治体では開庁日に受付を行い、郵送・窓口・電子申出の対応状況は自治体ごとに異なります。
以前とは別の自治体に住んでいる場合
現在住んでいる自治体ではなく、生活保護を受給していた当時の自治体に申し出ます。例えば過去にA市とB市の両方で生活保護を受給していた場合、それぞれの自治体で対象となる期間があれば、原則として各自治体への申出が必要です。
現在も生活保護を受給している場合は申出が必要?
現在生活保護を受給しており、対象期間も現在と同じ自治体で保護を受けていた世帯については、原則として申出手続は不要です。自治体の準備状況に応じて、2026年3月から順次追加給付が進められています。
ただし、現在とは別の自治体で生活保護を受給していた期間がある場合、その過去の自治体分については、当時の自治体への申出が必要です。
もらえる額はいくら?一律ではない
追加給付額は、当時の年齢、世帯人数、地域の級地、生活保護を受給していた期間、加算の有無などによって異なります。
厚生労働省は、2013年8月から2026年3月まで継続して生活保護を受給していた場合の参考例を公表しています。
| 世帯例 | 都市部(1級地-1)の例 | 地方部(3級地-2)の例 |
|---|---|---|
| 60歳代の単身世帯 | 合計 約10.5万円 | 合計 約8.5万円 |
| 30歳代夫婦+4歳の子ども1人 | 合計 約20.4万円 | 合計 約16.1万円 |
注意:上記は「2013年8月から2026年3月まで継続受給していた特定の世帯類型」の試算例です。すべての元受給者が8万円~20万円程度を受け取れるという意味ではありません。受給期間が短ければその期間分のみとなり、年齢・地域・世帯人数・加算等でも金額は変わります。
追加給付率の目安
| 対象期間 | 保護費の追加給付に用いる給付率 |
|---|---|
| 2013年8月~2014年3月 | +0.8% |
| 2014年4月~2015年3月 | +1.6% |
| 2015年4月以降 | +2.4% |
ただし、+2.4%が2026年3月までのすべての生活保護費に一律で上乗せされるわけではありません。基準生活費や各種加算ごとに追加給付の対象期間が定められています。
元受給世帯の申出方法
申出先は、生活保護を受給していた当時の自治体です。厚生労働省の標準様式では、主に次の書類が案内されています。
- 追加給付の申出書
- 申出者の本人確認書類の写し(マイナンバーカード表面、運転免許証、在留カード、障害者手帳、パスポートなど)
- 原則として全世帯員の戸籍謄本の写し(外国人の場合は住民票の写し)
- 振込口座を確認できる通帳またはキャッシュカードの写し
- 追加給付に必要な調査についての同意書
- 必要に応じて、各種加算を確認するための資料
- 代理人が手続する場合は委任状等
自治体独自の申出書が用意されている場合は、自治体の様式を利用します。戸籍謄本などについても一定の提出省略要件があるため、提出前に当時の自治体の案内を確認してください。
いつ振り込まれる?
全国一律の振込日はありません。元受給世帯については、2026年8月1日から2027年7月31日まで申出を受け付け、自治体の準備状況に応じて順次支給されます。
追加給付が決定すると、自治体から世帯主へ追加給付決定通知書が送付されます。
この記事のポイント
- 現在生活保護を受給していない世帯も追加給付の対象になり得る
- 元受給世帯の全国統一の申出期間は2026年8月1日~2027年7月31日
- 申出先は現在の住所地ではなく、原則として当時生活保護を受給していた自治体
- 支給額は一律ではなく、受給期間・年齢・世帯人数・地域・加算などで変わる
- 厚労省の長期継続受給の例では、都市部の60代単身で約10.5万円、30代夫婦+4歳児1人で約20.4万円
- 現在受給中の世帯は同一自治体分について原則申出不要だが、過去に別自治体で受給していた期間はその自治体への申出が必要
よくある質問
Q:今は生活保護を受けていません。それでも対象ですか?
対象になる場合があります。特に2013年8月~2018年9月の間に生活保護を受給していた世帯は対象になり得ます。現在受給していない世帯は、2027年7月31日までに当時の自治体へ申出を行う必要があります。
Q:全員10万円や20万円がもらえるのですか?
いいえ。10.5万円、20.4万円などは厚生労働省が示した特定条件での試算例です。実際の追加給付額は、受給していた月数、年齢、世帯人数、地域、加算の有無などによって変わります。
Q:2018年10月以降にしか生活保護を受けていない場合は対象外ですか?
一律に対象外ではありません。入院患者日用品費、介護施設入所者基本生活費、障害者加算など一部の加算、期末一時扶助など、2026年3月まで追加給付の対象となる費目があります。
Q:現在生活保護を受給中ですが、追加給付は収入認定されますか?
厚生労働省のFAQでは、今回の追加給付は生活保護上の収入認定の対象にはならないと案内されています。
Q:過去に複数の自治体で生活保護を受けていました。どこに申し出ますか?
対象となる受給期間がある自治体ごとに申出が必要です。現在の自治体で受給中の場合、現在の自治体分は原則自動ですが、過去の別自治体分はその自治体へ申し出ます。
公式情報
- 厚生労働省:最高裁判決を踏まえた保護費の追加給付に関するお知らせ(2026年7月17日)
- 厚生労働省:最高裁判決を踏まえた保護費の追加給付に係る申出手続について
- 厚生労働省:平成25年生活扶助基準改定に関する最高裁判決への対応について
- 厚生労働省委託:最高裁判決を踏まえた保護費の追加給付相談センター
- 最高裁判所:令和7年6月27日 生活保護基準引下げ処分取消等請求事件




