精神障害に関する公的支援は、「現金が毎月もらえる制度」だけではありません。障害年金、重度障害者向け手当、休職中の所得保障、精神科通院の医療費軽減、手帳に基づく福祉サービスなど、目的の違う制度が並行して存在します。

精神疾患の診断名があるだけで、以下の給付が自動的に支給されるわけではありません。障害年金は初診日・保険料納付・障害状態、特別障害者手当は著しく重度で常時特別の介護が必要な在宅状態、傷病手当金は健康保険と就労不能など、制度ごとに別の審査があります。

制度概要

制度2026年の主な支援性質
障害基礎年金2級 年84万7,300円/1級 年105万9,125円(一定の生年月日の人。子加算別)年金
障害厚生年金1~3級。3級最低保障 年63万5,500円(一定の生年月日の人)年金
特別障害者手当月3万450円(2026年4月~)著しく重度の在宅障害者向け手当
自立支援医療(精神通院)対象医療の自己負担 原則1割+所得別月額上限医療費軽減
傷病手当金1日当たり標準報酬ベースの概ね3分の2、通算1年6か月休職中の所得保障
精神障害者保健福祉手帳1~3級。各種支援・サービスにつながる認定制度。定額現金給付そのものではない

1.障害基礎年金|2026年度2級は年84万7,300円

対象者

国民年金加入中、20歳前、または一定の60~64歳の期間に初診日があり、保険料納付要件などを満たし、障害認定日に1級または2級の障害状態にあるなどの要件を満たす人です。

年金額

2026年4月分から、昭和31年4月2日以後生まれの人は1級:年105万9,125円、2級:年84万7,300円。生計を維持している対象の子がいる場合、1・2人目は1人につき年24万3,800円、3人目以降は1人につき年8万1,300円が加算されます。

精神障害の審査

日本年金機構は精神障害・知的障害について「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」を用い、日常生活能力、療養状況、生活環境、就労状況などを総合的に審査します。病名だけで等級が決まるわけではありません。

2.障害厚生年金|初診日が厚生年金加入中なら3級も

初診日が厚生年金の被保険者期間中で、保険料納付要件等を満たす場合は障害厚生年金の対象を確認します。1~3級があり、1・2級は障害基礎年金とあわせて受けられる場合があります。

2026年度の3級最低保障

昭和31年4月2日以後生まれの人の3級最低保障額は年63万5,500円。実際の年金額は報酬比例で計算されます。

重要:精神障害者保健福祉手帳の等級と障害年金の等級は別制度です。「手帳2級なら障害年金2級」と機械的に決まるわけではありません。

3.特別障害者手当|著しく重度で常時特別の介護が必要な在宅20歳以上

支給額

2026年4月から月3万450円。原則として2月、5月、8月、11月に前月分までが支給されます。

対象者

精神または身体に著しく重度の障害があり、日常生活で常時特別の介護を必要とする在宅の20歳以上の人です。本人、配偶者、扶養義務者の所得制限があります。

注意点

精神障害がある人全般に月3万450円が支給される制度ではありません。対象は非常に重度の状態に限られます。

4.自立支援医療(精神通院医療)|継続通院の自己負担を原則1割へ

精神疾患のため通院による精神医療を継続的に必要とする人について、対象医療の自己負担を軽減する制度です。

負担の仕組み

対象医療は原則1割負担で、さらに所得に応じて1か月当たりの自己負担上限額が設けられます。「重度かつ継続」に該当する場合は別の上限が適用されることがあります。

対象となる医療

精神障害と、その障害に起因して生じた病態に対する通院医療が中心です。入院医療は精神通院医療の対象ではありません。

5.傷病手当金|会社員等が精神疾患で働けない場合

健康保険の被保険者が、業務外の病気・けがで仕事に就けず、待期や給与などの要件を満たした場合の所得保障です。精神疾患による休職でも制度要件を満たせば対象となり得ます。

支給期間

同一傷病について支給開始日から通算1年6か月。

支給額

原則として標準報酬月額を基に算出した1日当たり額の3分の2相当です。

6.精神障害者保健福祉手帳|1~3級、給付金そのものではない

精神障害者保健福祉手帳は、精神疾患の状態と能力障害の状態の両面から総合的に判定し、1級から3級までに区分する制度です。市区町村の担当窓口を経由して都道府県知事または指定都市市長へ申請します。

何が受けられる?

手帳を持つことで、税制、公共料金・交通、福祉サービスなどにつながる場合がありますが、内容は国・自治体・事業者で異なります。手帳を取得すれば全国一律で毎月一定額が振り込まれる、という制度ではありません。

障害年金・手帳・自立支援医療は別々に判定される

制度主に見るもの他制度が必須か
障害年金初診日、納付、障害状態、日常生活・就労状況等手帳取得が支給要件として必須ではない
精神障害者保健福祉手帳精神疾患の状態+能力障害障害年金受給が必須ではない
自立支援医療精神疾患と継続的な通院精神医療の必要性手帳取得が一律必須ではない

この記事のポイント

  • 障害基礎年金2級は2026年度年84万7,300円(一定の生年月日の人)
  • 厚生年金加入中に初診日がある場合、障害厚生年金3級も確認
  • 特別障害者手当月3万450円は「著しく重度・常時特別の介護」が必要な在宅者向け
  • 自立支援医療は現金給付ではなく精神科通院費の軽減
  • 手帳・障害年金・自立支援医療は同じ基準で自動連動する制度ではない

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よくある質問

Q:精神障害者保健福祉手帳があれば障害年金も受け取れますか?

自動的には受け取れません。手帳と障害年金は認定基準が異なり、障害年金では初診日、保険料納付、障害状態などを個別に審査します。

Q:障害年金は働いていると受け取れませんか?

就労している事実だけで一律に対象外になる制度ではありません。精神障害では就労状況も総合評価の要素となるため、仕事内容、援助の有無、勤務状況などを含めて審査されます。

Q:自立支援医療を使うと病院代が無料になりますか?

原則無料ではありません。対象医療の自己負担が原則1割となり、所得に応じて月額上限が設定されます。

Q:特別障害者手当は精神障害でも対象になりますか?

精神または身体の著しく重度の障害が対象であり、精神障害も制度上含まれます。ただし日常生活で常時特別の介護が必要な在宅20歳以上など、非常に重い要件があります。

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